果しなき流れの果に (ハルキ文庫 こ 1-1)
果しなき流れの果に (ハルキ文庫 こ 1-1) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
佐世子と野々村のささやかで小市民的な物語が、ある意味では構想の全体を貫流する核でもある。また、そうでないと、この壮大なスケールのSF世界が定点を結びようがないからでもある。これは、やはり一方では野々村の夢であり、佐世子が聞いた夢の物語なのである。逆に葛城山中の古墳は、物語を矮小化する危険さえ孕んでいた。第3章以降が本格的なSF空間であるが、ここでは時間のパラドックスに敢えて挑戦するかのようなスタンスで物語が展開してゆく。多少の無理は承知の上でだろう。だからこそ、これは佐世子の物語に回帰するのである。
2019/01/01
あも
【まーさ課題本】白堊紀、噴火する火山の麓で鳴り響く電話の音。時代は現代を通り過ぎ遥か未来へ。更に更に時は進む。無限に分岐しゆく可能性の果て。過去へ、未来へと縦横に飛ぶ時間の果て。宇宙の果て。永遠の向こう側。人類の知覚できる階梯を超えた高次の超意識体。存在とは、意識とは一体何か。正直理解が追いつかない部分もあった。しかし自らの心の底にある巨大な宇宙と極小の意識の果てを知りたいと希う強い欲求。それを暫し満たしてくれる得がたい時間となった。総てを知ったその果てにある物。それは隣に座る大切な誰かの体温なのである。
2018/03/13
やきいも
小説「日本沈没」の著者による「日本のSF小説の名作」と言われる作品。砂が永遠に流れ落ちる不思議な砂時計が発見された。そしてその背後で十億年もの時空を超える壮大な戦いが展開されていた...。クライマックスの「時の流れとは?」、「宇宙とは?」という謎への著者の説明は私にはやや難解だったかな。それでも小説世界のスケールが大きかったので読み終わった時にはまわりの世界がこれまでとは違ってみえた。
2017/06/10
おか
大地が揺れ 火山が噴火している最中 ティラノザウルスは仕留めた獲物を食べるのをやめ うるさく鳴り響く金属音の出所を探す。そして 岩の裂け目に必死で頭を入れ込み その洞窟の奥に見出したのは 奇妙な形をした金色の電話器!このプロローグから始まった 時空間を自由に越える物語。私は数学や物理や歴史 地理 全く不得手なので 只々物語の進行に身を委ねて楽しんだ。小松さんの物語は そういう読み方でOKだと思う。そして 読み進める内に 難しい事は解らないけど 生きていく上で 面白い発見がある(#^.^#)
2018/03/06
催涙雨
面白かったのだが個人的にはものすごく感想の書きにくさを感じる作品でもあった。これがいわゆるセンスオブワンダーの一種なのだとは思うが、どう面白かったかを言葉にしにくい。映像などによるイメージの増幅がまったく行われない媒体でこれだけのスペクタクルを自在に描き出してしまう表現力は素直にすばらしいものだと思う。地球で起こる小さな出来事を端緒にx-y-z、そして次第にw軸を包含する途方もない四次元スケールの物語が展開される。この広がり方がとても気持ちいい。宇宙、時間そして空間。大きすぎるものへのある種の挑戦状。
2019/06/28
感想・レビューをもっと見る