ミネハハ
ミネハハ / 感想・レビュー
匠
装丁の美しさに惹かれて買ったのに4ヶ月も積んでいてようやく今日読了。自殺した老女が書いた未完の原稿を訳されたという本なので、完全に納得のいく物語ではないし、むしろ絵画的で繊細な描写をされる様々なシーンを、パズルのように組み合わせては想像させる作品となっている。少女という時期を過ごす庭の意味、生活感のまるでない日々、箱に入れられる意味、川から上がった死体、どれもこれも抽象的であり、何かを象徴している気がする。また、色や仕草など視覚的な表現は細かいが、匂いや味の表現が皆無だったのが個人的にはすごく気になった。
2013/08/21
absinthe
少女という短い時間の中。ひとり語り心象風景をつづった詩のような話。独白の形だが寓話のようで隠喩ばかり。語り部は全く不自然とは思っていない幽閉生活と閉ざされた世界。読者には不気味でしかない。行われるのはひたすら踊りのレッスン。捉えどころのない時間の流れ。心と体の成長の断片をひたすら隠喩で語る。繊細で微妙で筋の通らない感じが良い。
2023/05/16
harass
映画「エコール」の原作。1903年発表で驚く。100ページほどの中編小説。著者の隣に住んでいた老女が自殺する。彼女が読んで欲しいと残した手記、それには彼女の幼少期の体験が書かれていた。森の中で少女たちが世間とは隔離されて暮らしていた。新しい少女は素っ裸で棺に入ったまま運び込まれ、年長の少女は無言のまま出ていくのだった。少女たちは毎日ダンスと音楽を学び合う。ダンスや容姿の優れた娘は外の劇場に出演するのだが…… 少女の視点のみで描かれる儚く美しく不穏な世界。端々の言葉でいろいろ推測できるが……
2017/05/20
柊渚
過ぎ去ってしまうが故に留めておきたい、無垢な少女たちの刹那の美しさ。そこは目を瞠るほど眩い光景であるはずなのに、不穏な蠢きを感じ取ってしまい心が落ち着かない。優しくも残酷なユートピア。柔らかな緑の中に、刻み込まれていた淡い色の記憶。透ける緑色の葉。隙間からこぼれる、金色の光。水遊びに興じる少女たちの真っ白な素足と翻るワンピースの残像。夏の日ざしを受けて、蜜色に輝く水滴。瞼の裏に白昼夢のように現れる鮮やかな光景、その浮世離れした美しさに思わず溜息が漏れる。(⇒)
2022/06/22
りりす
白い服の少女達が駆けていく。森を、湖を、庭園を、まるでニンフのように。髪のリボン、揃いの制服。何処かの学校の生徒に違いない。彼女達は「なぜここに来て、そしてどこへ去っていくのか?」。閉ざされた七年間の物語。映画『エコール』の原作小説。美しいものだけに価値を持たせる覚悟のある人向け。『ヴァージンスーサイズ』など、少女の危うさと視覚的ガーリーが好きな人にも。
2015/06/30
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