千年後の百人一首
千年後の百人一首 / 感想・レビュー
masa@レビューお休み中
『うた恋い。』を読んで、百人一首を好きになった。子どもの頃にカルタをやった訳でもなければ、歌を諳んじることもできなかった。でも、ようやくこの年になって百人一首の魅力がわかるようになった。そんな矢先に大好きな詩人・最果タヒとアーティスト・清川あさみが現代に百人一首を蘇らせたのだから読まない訳がない。単なる訳ではなく新たに息吹を吹き込んで、現代の言葉とアートで生まれ変わった世界。同じなようで同じではない、新たな世界がそこにある。原文のままではよくわからないと思っているなら、是非これを読んで欲しいな。
2018/05/07
なゆ
すごく綺麗な本で、うっとりした。百人一首をこんな風にしみじみと読み返す時がくるとはね。一首ごとに、清川あさみさんのイメージで刺繍やビーズやレースで彩られた作品と、最果タヒさんが現代語訳として詩でつづる。なんて豪華なコラボなんでしょ。タヒさんの言葉はスッと入ってきて読みやすい。清川さんの作品は大好きなので、質感とか材質とか実物をしげしげと見てみたい。きっと、もっとキラキラ美しいと思う。巻末に解説があるのも嬉しい。千年という“時”に、しみじみ。これこそ手元に置いておいて、時々眺めて浸りたい本。購入しなくては。
2018/06/05
aquamarine
清川あさみさんが、独自のビーズや刺繍を使った手法で百首すべての情景を作り上げ、最果タヒさんが、新訳をつけた一冊。歌仙絵とは全く違う独特の情景がそこにあります。今までモノクロに近い情景で浮かんでいた自分の中の世界が、目の覚めるような情景で切り取られると、自分の持っていた世界全てがさーっと綺麗に色づいていく幸せ。慈しむように一首ずつ堪能しました。タヒさんの新訳は、私の持っていたイメージと違うものもありましたが、それもまた新鮮です。巻末に説明もあり、じっくり比べるのも楽しく、まだまだじっくり楽しめそうです。
2019/04/16
さつき
最果タヒさんが訳す百人一首。瑞々しい風景描写、暗い情念。ひりひりと痛いほどの孤独。現代語で表現するとこんな世界もあり得るのかと驚かされました。小さい頃から坊主めくりやカルタ取りと親しんできた百人一首だからこそ、従来のイメージに囚われていました。99番、100番の後鳥羽院、順徳院の歌は悲しく、そして慈しみに満ちています。百人一首は鎮魂のために捧げられた歌集だという説をよく聞くけど、この訳を読むと何だか納得してしまいます。詩歌を読んで生臭い政争を思い起こすのも無粋なんでしょうけど。
2018/03/19
がらくたどん
『百人一首という感情』と併読。本書だけを読んだ時は百人一首の現代詩訳というには詩人の気持ちが前面に出ているしかといって根底にある感情が詩人だけのものには思えない(古歌の詩情とのシンクロ度を強く感じる)ため、うまく理解できなかった。今回併読して最果氏が挑んだ時を超えた感情の共振という目論見が朧げに分かると、編まれた詩の面白さがグッと迫って来た。最果タヒという現代の詩人の身体の中を古の歌人の感情が時に激しく時には甘やかに通り抜けることで現れた詩人の感情を書き留めた現代詩に千年の遠さと信じがたい近さを感じた。
2022/08/28
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