虚無の信仰 西欧はなぜ仏教を怖れたか
虚無の信仰 西欧はなぜ仏教を怖れたか / 感想・レビュー
さえきかずひこ
19世紀西欧で仏教がいかに誤解のもと論じられたかを米英独仏の文献を中心に分析する言説史であり、解説で指摘されるようにサイード『オリエンタリズム』に通じる欧州批判とも読める。仏教の涅槃や無我といった概念を個を滅し、死や破壊を渇望する反社会的信仰と解釈した理由には、当時の欧州自身のはらむニヒリズムやアナーキズムが投影されていたという結部での解釈は今となっては陳腐な気がするが、原著が1997年に刊行されているので仕方ない。ブッダがメルクリウスと同一視されたとかエチオピア人と見なされたとか逸話に満ちた一冊である。
2021/04/28
袖崎いたる
資料として。訳者のあとがきを読むだけでも良かったかもなぁ。もしくは著者の序文。お歴々のインド=仏教に対する手の平返しがたいへんアホらしく読める。さんざんdisってた翌年にはそこに哲学があることは否定できない!とか言い出すんだもんな。しかも結局だれもその実態を知らないママ、原典知らずのままで机上の空論ってパターン。西洋人というやつは理解したくて仕方ないんだってのがわかる。そのためには誤解も辞さない。カントの主観やヘーゲルの精神現象学なんてまさにそれやろ。特権ある視点を上に上に育てていく発展向上開拓ゲーム。
2021/07/18
のうみそしる
ああ難しい。注釈が多すぎて死ぬかと思った。仏教がどのように西欧社会に広まり恐れられたかの歴史。仏教が誤解され利用され西欧の歪みをあらわす。魂の消滅を熱望するなんて全く理解できなかったのだろう。仏教や新思想を取り込んで結局優性思想につながる当時の空気感。本当の仏教の教義については記されていないので今後の課題とする。ローマへ、さもなくばインドへ。
2022/04/30
takao
西洋では、当初、ニルヴァーナが魂の消滅として、仏教を虚無の信仰として怖れたらしい。
2016/12/26
okaka
キリスト教とまるで異質な仏教がどのように西欧世界から誤解されてきたのかという事を語った本。他者を理解する時に自分の影を投影してしまうのは個人でもよくある事なので用心しておきたいところだけど、自分自身から逃れる事ができない以上、完全に客観的にもなれないというのがまた悩ましかったりして。
2012/10/05
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