地の鳥天の魚群
地の鳥天の魚群 / 感想・レビュー
てふてふこ
1984年、28才で書いた処女作。表題作と深い穴は自分も子供の頃よく視た夢を色々思い出しながら読んだ。一家団欒を大切にしてきた石脇氏と家族が、徐々に崩れていく。テレフォン宗教・お人形さんごっこと怪しげなものが出てくるが、その最もな位置にいるkとは何者!?終始心がざわついていました。乱歩の墓といい、ホラーの様でした。
2014/06/02
草食系
気さくな友達親子に憧れるが、家庭内や仕事場でも、規定の枠から外れる事のできない真面目な父親。タイトル通りのおかしな世界が着々と進行していく中で、現状を論理的な解釈と得意の反省で分析し、なんとか現実に踏み止まろうとしている。段々と正常が狭まり不安感が増殖し、不思議な息苦しさ。本人はどうしようもなく真面目で家族想いなのに、口に出さないから全く伝わっていない。崩壊しそうな家庭。幻想に飲み込まれそうなお父さんの日常。取り戻せるのか。抑制の効いた端正な文章で不安定な世界が描き出されていて、とても良かったです。
2013/01/13
星野
奥泉光・幻の処女作。いや、これは良い。個人的にとても好みでした(><)元々石脇氏のようなおじさんが主人公の小説が意外に好き。村上春樹っぽかった。奥泉光さんは、現代でほぼ絶滅している近代文学の流れを自然に組んでいる数少ない作家さんだと思う。クワコーも好きだけど、こういうのもまたどんどん書いてほしいな^^
2012/01/19
どんまいシリル
良かった。これが、最初に手にした奥泉光だったら、大好きな「鳥類学者のファンタジア」とは出会えなかったに違いない。静かに狂っていく感じで、ものすごく怖かった。別の本を読んで寝ても、悪夢を見てしまう。これからどうなるのといったラストであったが、話が終わってほっとした。まいりました。
2017/03/24
乱読999+α
今年、最初の読書は、奥泉光氏の処女作。硬質で鋭利な文体で書かれた、普通の家族の父親が陥った家庭崩壊。息子の新興宗教への入信、娘の奇妙な「人形」への化身。自身も平穏な生活に倦んだのか唐突な衝動に駆られる。幻想と現実が夢の中でも混在し、不思議さと不気味さを感じられ、本作が書かれた時代背景もあり、不穏となり下手なホラー小説よりも恐怖を生む。やっぱり「奥泉氏」の作品、一筋縄では読解できない。「乱歩の墓」「深い穴」も短編ながら“ゾワァ”とした物を感じられた秀作。
2016/01/04
感想・レビューをもっと見る