もういちど 村上春樹にご用心
もういちど 村上春樹にご用心 / 感想・レビュー
ケイ
作者は哲学者で翻訳家で村上春樹の大ファン。村上作品の根底にあるものを彼の知性を駆使して語る。これを読むと、村上の作品についてわかった気になる。彼の作品を読んでいることを前提として。「邪悪なものをめぐる神話」、「青年の成長譚」 「血族と因果の物語」。世の中には「父権的」なものがあるが、それがなかったら人はどのようにして生きるのか、君はそれでもいいかい?との問い。そして弱い一人のボクがその父権的力に戦いを挑む、それは狭いエリアの戦いで終わる、ささやかだが大切な仕事。それを念頭に置いてまた読み直すとするか。
2015/04/25
との
前半は仕事が忙しい時に読んだからかあまり残っていないけど、後半はとても興味深く読めました。どうして村上春樹に惹かれるのか、自分でもよくわからない部分を、内田樹が交通整理してくれた気がする。◇村上文学における労働哲学と、朝ごはんの機能性が特に面白かった。世界には不条理な「邪悪なもの」があって、でも一人一人の雪かき仕事のような無名の、ささやかな献身の総和として、世界は辛うじて成り立っている。そんな雪かき的な仕事が、世界の善を少しだけ積み増しする。村上春樹の誠実さが垣間見えます。さて私は、どちらの人間だろうか。
2016/11/07
Gatsby
改訂版だと知っていながら購入。もちろん、前の本でも読んでいる内容が多かったのだが、そのことも確認しつつ楽しく読むことができた。やはり、優れた読み手によって、小説は新たな光を与えられるのだと実感した。柴田元幸先生との対談にあったのだが、内田先生が離婚して精神的にまいっていた時期に村上春樹を読んで評価するようになったとのこと。実は私も失恋した時に村上春樹をむさぼるように読んだことを思い出した。The Great Gatsbyを原書で読んだのも同時期だったな。
2010/12/01
Bartleby
村上春樹を読むとなぜ無性に料理や掃除がしたくなるのか。これを読んでその理由がわかったのと同時に自分の中の「雪かき仕事」の意味が大きく変わった気がした。際限もなく、称賛もない仕事だけれどもそれが世界の秩序を維持するのに少しだけ貢献している。そしてふいに訪れる「理由もない悪意・邪悪なもの」が自分や自分の大切なものを脅かすとき、身の周りだけでも小さな秩序を作っていくいけるかどうかが生命線になる。村上春樹をどう読むかだけに限定されない、自分たちが生きるうえでの大切なことを教えてもらえた本でした。
2012/01/26
fishdeleuze
『村上春樹にご用心』にエルサレム・スピーチ,いくつかの小論,柴田元幸との対談などを新たに収録し編纂された本(別のベストアルバムみたいなもんですとのこと)。新たに収録された小論のうち『1Q84』についての論考において,村上は今回初めて「父」なるものについて言及していると述べている。「父」なるものとは?「父の呪縛」とは?天吾らの反リトルピープルモーメントが「父」(=NHK, さきがけ,証人会)の世界の根源的未規定性あるいは本質的無意味性を暴いてしまったあと「子ども」達はどう生きていけばいいのか?→
2012/08/25
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