玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ(1400円+税 ナナロク社)
玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ(1400円+税 ナナロク社) / 感想・レビュー
❁かな❁
新鋭歌人の木下龍也さんと岡野大嗣さんが男子高校生の視点で夏の1週間を短歌で紡がれる。瑞々しく繊細で危うげな雰囲気で高校生らしさを感じる。思春期の頃の方が死との距離感が近かった気がする。装丁も美しくフォントもこの作品にぴったり。読了してから知ったが短歌の頭の位置が高い方が木下さん、二文字下げて始まる方が岡野さんとのこと。特別付録の舞城王太郎さんの掌編2編が嬉しい♡スピンオフとして書かれた掌編は女子高校生視点でそちらも高校時代の日常の出来事、色んな想いを見事に描かれている。マイジョー最高♡印象に残った短歌は
2018/03/10
けんとまん1007
この頃(高校生)は、随分前にになるが、当時のこおを何となくではあるが、想い出す。子供のようでもあり、大人に近づく頃でもあり、毎日いろんな思いが入り混じる頃。そうそう、そうなんだよなあ~と。表現は違っていても、根底に流れるものは変わらない。
2022/06/10
あも
初回限定の舞城の掌編ペーパー×2が目当てだったが悪くない。歌集というものを手にするのは久しぶり。2人の歌人が交互に男子高校生の1週間を短歌で描く。『交叉路でGPSのぼくが死ぬぼくと若干ずれたばかりに』、『Googleに聞いてもヒット0だったからまだ神にしかバレてない』など、今風のガジェットを用い、諦観の薄皮一枚をつぴと切り裂けば中身が溢れて来そうな危うさを。青春期の彼らは曖昧模糊とした感情を何かの言葉に押し込める術を知らない。大人になった僕らは言葉の枠にはまらない感情を掬い上げる術をきっと忘れてしまった。
2018/05/16
☆よいこ
YA。エモい歌集。7月の頭一週間、初夏のかほり。青春の1ページを破りとったような短歌▽弁当の底にぼんやりうつってる油まみれのぼくのたましい/プロフィールに書きたいことがなにもないことを書きたいことを書きたい/未知/既知を隔てる紙の名でもある猫の名を呼ぶシオリ、シオリ、と/向き合わないように置かれた腰掛に僕ら花びらみたいに座る▽7月7日になにがあった▽特別小冊子2冊、舞城王太郎の短編あり「五が頭で七がおっぱいで五が腰で二つの七七が両足って感じがするんだよね」▽2018年刊。良本
2023/01/16
chimako
『図書館のはこぶね』からの一冊。若くて痛い想いや生々しい現実、死への憧れと恐怖。ことば選びや視点が独特で「歌人ならでは」なのでしょう。最初の方に好みの歌が集中。7日は文字が揺れ船酔いの感覚の後で目がまわる。「行き先に対し垂直方向を向いて僕らが待つのは電車」「体育館の窓が切り取る青空は外で見るより夏だったこと」「置いてかれたんじゃなく好きで残ってる好きで残って見てるあめんぼ」「進路調査表は風に添付して海に送信しておきました」 情景と心情が分かりやすい歌が好き。あまりに生々しい表現は個人的に好まないです。
2022/05/13
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