ペガサスの挽歌 (シリーズ 日本語の醍醐味 4)
ペガサスの挽歌 (シリーズ 日本語の醍醐味 4) / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
元々、児童文学出身だった皆川博子女史。しかし、児童文学にしては魚雷の中に閉じ込められて腐敗が止まっていた兵士を政治に利用する者や自惚れたギターの行方など、皆川作品の毒は健在でした。でも「こだま」や「コンクリ虫」のように茶目っ気のある優しさもある作品もあります。「地獄のオルフェ」は近親相姦をテーマにしているのですが嘲笑っていた「世間」によって一番、愛していた相手が拒絶するようになってしまったという悲哀が印象的でした。「天使」、表題作と「黄泉の女」、「声」、「家族の死」が好きです。
2013/02/21
mii22.
児童文学作品を含めた初期の単行本未収録短篇集。「コンクリ虫」「こだま」のような可愛らしいものもあるが、一篇目の「花のないお墓」は児童文学とは思えないほど容赦なく皆川さんらしい。全体的に背徳、禁忌の色濃い狂気に満ちた作品だが、数ページの短篇なのでほどよく毒が効いている。表題作と「地獄のオルフェ」「天使」「黄泉の女」が特に良かった。
2015/09/15
なしかれー
皆川さんの単行本未収録作品を集めた短編集。「日本語の醍醐味」と名付けられたシリーズに相応しい短編集。こんなにも背徳的で退廃的にも関わらず、決して下品ではなく、甘く美しい。読んでいるうちに生と死の境界が曖昧になっていく感覚はむしろ心地良い。
2014/07/31
caramel
皆川さん、やはり凄い。こちらも70年代の作品ばかりだそうですが、完成度高くどれも読み応えがあった。児童文学作品も収録されているけど、本当に児童文学!?と思ってしまうようなものもあり、皆川節炸裂で良かったです。コンクリ虫は意外にも可愛くてほっこりしました。ドロドロしていても、毎回深みにハマらせてくれる感じで、それが何か心地良い文章で、まだまだ他にも読んでみたいと思いました。
2021/04/24
ゆう
迷宮のような、霧がかかった別世界のような作品集で感嘆した。「シリーズ日本語の醍醐味」の通り、言葉の魔力が桁外れだったので、シリーズを揃えるのも良いかもしれない。閑話休題、本書の冒頭の児童文学作品と、成人向け(?)作品の差に少し驚いた。前者はより幻想的で、とても好ましかった。後者の成人向け作品よりも好きかも。解説にある通り、作品をジャンルの枠に捉えようとすることが愚かなのだと出版業界にもっと広がればいいな。
2022/01/05
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