老薔薇園(シリーズ 日本語の醍醐味 7) (シリ-ズ日本語の醍醐味)
老薔薇園(シリーズ 日本語の醍醐味 7) (シリ-ズ日本語の醍醐味) / 感想・レビュー
三柴ゆよし
シリーズ中、最も買いな一冊ではないか。全集でしか読めなかった散文作品「老薔薇園」は随筆とも詩とも小説ともつかない異様な形式であり、金子光晴の魔術的文体が思うさま堪能できる。その他の詩・散文のチョイスも見事で、どちらかといえば耽美な作品を多く収めているが、そんな流れのなかにいきなり「寂しさの歌」とか「三点」「森の若葉」あたりの詩がぶち込まれて、こちとらの涙腺を破壊しにかかる。〆の詩が「そろそろ近いおれの死に」なのも、ベタながら素敵。この一冊で金子光晴の人となり、人生を概観した気にもなれる。一家に一冊。是非。
2018/05/04
渡邊利道
表題の短い小説集を真ん中に、前半を主に1920年代の詩、後半を日中戦争以後(戦後も含む)の詩で構成された選集。代表作も多く収録し、詩人の退廃的でかつ硬派な一面がよく見える。文学が反社会的なものだった時代の詩。とくに上海を活写した「渦」は全集以外ではここでしか読めないらしい傑作。表題作も無類に美しく、頽れる詩的散文の魅力に溢れている。
2018/01/09
nightowl
以前に見掛けたことのある金子光晴評伝表紙の衝撃が強烈でさぞや前衛的な詩を書いているのかと思いきや、意外に中井英夫を思い出させるような幻想的な詩がほとんどを占めている。腐りゆくものへの讃歌「大腐爛頌」さえも美しく感じる不思議。流石日本語の醍醐味シリーズに採られるだけはある。
2016/11/07
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