故郷の本箱: 上林曉傑作随筆集
故郷の本箱: 上林曉傑作随筆集 / 感想・レビュー
さらば火野正平・寺
以前、関口良雄『昔日の客』(名著!)を読んでいて上林暁さんの事を意識し始めた。高知県出身の私小説作家。私は坂本龍馬ファンなので高知の人贔屓である。古本が趣味の作家という事で楽しく読み始めた。古本にまつわる随筆はそう多くはないが、他の随筆にも味わいが深くてこの本が好きになってくる。冒頭の男子学生達が泣く話が好きだ。案外いまのアイドルファンと通ずる感情なのかも知れない。西村賢太の師匠・藤澤清造をはじめ作家達の追悼も載っている。最後は上林さんの仕事に対する姿勢が書かれているが、真面目さと優しさが柔らかい言葉で。
2019/07/17
HANA
故郷や幼馴染の話、古本の話、作家との思い出、決して派手さはないが、しみじみとした染み渡るようないい文章ばかりである。古本は買った本や手に入れた本の思い出や自慢が中心。僕自身珍しい本を買ったりすると、人に話したくなる手合いなので何となく同意しながら読む。一番いいと思うのは昔の事を語った随筆群。「幼い友達」、「鏡」、「村の学校」等どれを読んでも人生の一断面を切り取った小説のような趣がある。ちなみに造本も派手さはないがとてもいいデザインで、これらの話が収められるに相応しい、いい出来だと思った。
2013/01/16
こまっちゃん
故郷の本箱、この題名だけで悶絶するほど私の好みにドストライク。古本屋歩きが最大の娯楽だった昭和を代表する私小説作家上林暁の随筆選集です。夏葉社さんは良い本を出しますね。
2019/12/06
nstnykk9814
又吉直樹推奨の書店「夏葉社」が出版した高知出身の私小説家、上林暁の随筆選集。柔らかい語り口がいい。加能作次郎、吉井勇ら、転勤先の地方で知った作家らの名前が出てくるのも感慨深かった。
2015/11/22
月
★★★★☆(夏葉社出版の上林暁・随筆集。上林暁は不撓不屈の作家と呼べるだろう。ある意味壮絶な人生を歩みながら、文体が歪まず、精神が歪まず、むしろ極端に透明感ある暖かさのようなものを感じる。独特の温度感。文体だけでは決して読み取れない上林の文学に対する執念のようなものが間(あいだ)にある。もし上林に文学が無ければここまで強くは生きられなかっただろう。収録作では「枯木のある風景の出来るまで」が特に印象深い。撰出もいい。しかし・・全くの余談だが上林暁の本名は凄く固い・・字画総数多すぎないか・・。)
2013/02/14
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