あれから: 俵万智3・11短歌集
あれから: 俵万智3・11短歌集 / 感想・レビュー
ヴェネツィア
3.11のその日、俵万智さんご本人は東京で仕事。ご両親と一子たくみん(当時7歳)は仙台で被災。5日後にようやく仙台に帰り着いた万智さんは、その翌日からたくみんの手を引いて逃れていった。「子を連れて西へ西へと逃げてゆく愚かな母と言うならば言え」。危険を察知する母としての本能的な怖れがそうさせたのだろう。非難する人もいたと思う。まずなによりも命。また、彼女は次のように歌う。「何色にもなれる未来を願う朝 白いガーベラ君に手渡す」。母としてできることは子どもの未来を奪わないこと。これらの想いこそは普遍的なものだ。
2016/03/17
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
3.11を詠んだ短歌集でも、俵万智さんの軽やかで親しみやすい歌風は変わらない印象を受けた。山中桃子さんの淡い絵が寄り添ってかわいい短歌絵本になっている。震災の風景と子供への思い。受けとめ方はさまざまだと思うが、特に子供を詠んだ歌には何度もハッとさせられた。家族と仙台に住んでいた俵さんは、震災直後に息子さんの手を引いて5年間暮らした街を離れた。「恵まれているから」と言われる事もあったという。そうした声に応えたのが【子を連れて西へ西へと逃げてゆく愚かな母と言うならば言え】という歌だったのかも知れない。
2016/03/13
新地学@児童書病発動中
短歌の素晴らしさを実感できる本。五七五七七の小さな歌をおさめた46ページの本だが、あの地震で引き起こされた悲しみや怒り、不安が鮮やかによみがえってくる。後世の人があの地震を経験した人の心情を理解したい時は、映像を見るよりも、この歌集を読めばいいのかもしれない。歌は人の生きた感情を保存できるタイムカプセルのようなものだと感じた。
2014/05/06
masa@レビューお休み中
あのときの出来事は忘れてはいけない。だからこそ、いつかこの本を読むときがくると思っていた。震災から、すでに二年の月日が経っている。あれから、僕はなにかが変わったのだろうか…。そんなことを考えながら、俵さんの短歌を読んでいました。俵さんと息子さんが被災地を離れて、南の島に住居を移されています。そんな震災直後の心境から、仙台を離れてからの状況までを見ることができます。「子を連れて西へ西へと逃げてゆく愚かな母と言うならば言え」この歌、すごく心に沁みました。母の子に対する想いがひしひしと伝わってくるのです。
2013/07/27
パフちゃん@かのん変更
俵万智さんの3.11短歌集。特に心に残ったのは「子を連れて西へ西へと逃げてゆく愚かな母と言うならば言え」「醤油さし買おうと思うこの部屋にもう少し長く住む予感して」
2014/07/31
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