イバラード博物誌
イバラード博物誌 / 感想・レビュー
へくとぱすかる
架空世界とはいっても、どこかで見たような、懐かしささえ覚える風景。古代遺跡のようでもあり、異国風の街のようでもあり。広く長い道もなく、だから自動車の喧噪もない。複雑に入り組んだ建物や塔の建築。そしてひたすら明るい空。誰にでも自分だけの理想の街があり、イバラードの作者も空想の理想の街を描く。静かで孤独だが安らぎのある世界。どこかにあってほしいもうひとつの地球、音もなく走る市電が、邪魔にならない動きを与えている。
2019/10/14
Haru
ジブリの世界観にもリンクする「イバラード」。それぞれの土地の生活や気候、風俗などを描いた本。頭の中に実在(!)する世界をここまで美しく描き出せる、その再現の手腕が羨ましい。スーラを思い起させる柔らかであいまいな色合い、まるで御とぎの世界のようなイバラード。でもふと路地や木々の奥を覗くと暗くて黒い何かが潜んでいるような怖さもある。「熱」を感じられないのが独特。私の頭の中にも何度も訪れている街が存在していて、行く度に同じ楽しさを味わい、失敗し、迷い悩むのだがそれを紙に描き出す才能がないことが本当に残念です。
2014/11/19
らん
『耳をすませば』中の挿話「バロンのくれた物語」の背景画を制作した井上直久さんの画集。どこか時間感覚のない世界に紛れ込んだような気持ちにさせてくれる。スターシップのお店のネオン、色彩豊かな異空間を思わせる塔の街、百貨店、駅前…。ジブリの世界観だけではなく、なんとなくメイドインアビス、ゼルダの伝説の世界観も思い出す。めげゾウが可愛い!めげゾウ見るとなぜかクスっと笑ってしまう…。見る人の思いに反応して変化するソルマ、なんてものもあります。この世界観に入り込みたい。
2022/10/01
うなぎ
耳をすませばでバロンと旅をする場面に出てきた幻想的な背景を描いてた画家の、架空の国イバラードの旅スケッチ風画集。小惑星が集まる小高い丘、小さな星を売る店、鉱物、光、惑星、不思議な植物、空を浮かぶ小島ラピュタ、ラピュタ売り、恐竜みたいな不思議な生き物。こういう物が好きな人にはたまらんと思う、絵が小さめなので、もっと大きな画集で細かい場所を隅々まで見たくなった。
2019/03/29
片瀬
二重惑星、制御された重力、地平線を覆うような月、スケールの狂った銀河。「イバラード」の世界に触れたとき、きらびやかな色彩とイメージがなだれ込んできて、自分の主観なんて、まず、どうでもよく思えてきます。これが、畏怖でなくて何なのでしょう。マックスフィールド・パリッシュ、北見隆に影響を受けたそうで、それがファンタジックな作風に色濃く出ています。これらの幻想風景はよく「見覚えがあるような」「どこか懐かしい」と言われるそうですが、わたしはイマイチわかりません。いつか、そんな郷愁にかられてみたいです。
2015/02/14
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