アメリカのユートピア ―― 二重権力と国民皆兵制
アメリカのユートピア ―― 二重権力と国民皆兵制 / 感想・レビュー
渡邊利道
アメリカのマルクス主義文芸批評家ジェイムソンの、公式の政府と並行して統治が成り立つ「二重権力」の概念を用いて、国民皆兵制度をアメリカのユートピアとして提示するという論文を中心に、応答を8人の学者・批評家とSF作家キム・スタンリー・ロビンソンが執筆した本。最初の論文がもうかなりユーモアたっぷりに現在の壊滅的な左翼の状況から出発したもので、「政治の抹殺」とでもいうべき主張がユートピアに結びつく。他の論者はまあちょっと真面目すぎるけども。柄谷は相変わらず一人で喋る感が強くてこれはこれでもう味かもしれない。
2018/07/16
三浦何某が同じように「徴兵制」の主張をして嘲笑されていたが(恐らく、三浦の念頭にあるのは井上達夫の「徴兵制」論であると思うのだけれども)ジェイムソンの場合は、アメリカの伝統的な「抵抗権」に回帰することで左翼運動の復権(=「政治」の蘇生)を目論もうとしているように思える。もちろん、この挑発的な言辞を「ネタ」として受け取るべきか、「ベタ」として受け取るべきか、正直自分の中ではまだ判断が付きかねるし、日本的な文脈に即座に当てはめるのは危険かと思う。
2019/04/11
Hidekazu Asai
本書に収録された柄谷行人の「日本のユートピア」はフレドリック・ジェイムソンの「アメリカのユートピア」への批評であるが、なんと、柄谷は、ジェイムソンの「国民皆兵制」と「憲法第9条」の両輪が動いて「世界同時革命」が起きる、と主張している。 柄谷の「日本のユートピア」を読むだけでも本書は読む価値がある。
2018/08/25
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