大邱の夜、ソウルの夜 (KGB, 001)
大邱の夜、ソウルの夜 (KGB, 001) / 感想・レビュー
アキ
大邱の夜でパッコンの物語があり、ソウルの夜ではソ・コンジュの物語が描かれる。時系列で言うと逆になるが、著者のソン・アラムはこれは二人の女の話ではなく、一人の女の話だと強調する。ふたつの物語を書き上げるのに3年を要したらしい。家族と社会と絶え間なく葛藤し、器用に折り合えない女の話。合計特殊出生率0.72の韓国だが、日本も同じような状況であることは昨日ニュースで報道された東京の出生率0.99に表れている。旦那と夫の母親、自分の母親と子どもの世話、その上仕事に頑張るなんて、超人じゃないとできないよ。
2024/06/08
fwhd8325
新聞の書評を見て手にしました。マンガはあまり読まないけれど、実に社会性に富んだ作品でした。韓国の、このテーマは語られることが多いけれど、昭和の時代に生きた私には、つい最近まで日本も同じ社会だったと思う。そして、日本はその閉塞から解放されたように見えるだけなのかもしれない。この作品からは声が聞こえるようでした。その声や空気を逃さないように読みました。
2022/04/03
天の川
夜は本音がこぼれる。儒教思想が染みついた国で生きる女達はどの世代も多かれ少なかれ口惜しい思いを胸に秘めているのではないか。社会に出た途端に突きつけられる男尊女卑に根差す様々な理不尽、夫と妻、嫁と姑、母と娘の関係において自分の中に刷り込まれてしまっている規範…ソウルで仕事とワンオペ育児に振り回されるホンヨン、介護していた祖母の死により大邱を脱出しソウルで仕事を探すが挫折の連続だったコンジュ。「全然しんどくないよ、本当に」そう呟きながら生きているのだ。それはジェンダーギャップ指数が韓国より低い日本にも繋がる。
2023/08/21
竹園和明
大都会ソウルに住むホンヨンと家父長制が色濃く残る地方都市大邱に住むコンジュはネットを通じて友となり、コンジュがソウルに出て来た事により更に親交を深める。ホンヨンは夫との諍いが絶えず、またコンジュは母親との確執と仕事の停滞という問題を抱え藻掻き苦しんでいる。2人はたまに飲み互いの愚痴を語るが、常に寄り添っている訳でもなく、相手の非を指摘し気まずい雰囲気になってみたり。…2人の焦燥感や苦悩が見事に伝わる繊細な絵。本作はコミック作品だ。表情の描写がとにかく絶品。読後も残る物凄い余韻は、小説を完全に凌駕している。
2022/03/12
ぐうぐう
ホンヨンはソウルでイラストレーターをしているが、子育てに追われ、理解のない夫に苛立つ日々を過ごしている。お盆に夫の実家がある大邱へ向かうが、そこでも家父長制が当たり前のように残る夫の家族に囲まれ、息が詰まる思いをする。そんなホンヨンの拠り所は、大邱にいる友人・コンジュとのひとときだ。焼肉をつつきながらコンジュ相手にとめどない愚痴が溢れ出すホンヨンだが、コンジュにも物語が存在する。(つづく)
2022/05/01
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