背骨のフルート (マヤコフスキー叢書)
背骨のフルート (マヤコフスキー叢書) / 感想・レビュー
まさむ♪ね
詩人ヴラジーミル・マヤコフスキー、不実にして最後の恋を高らかに歌い上げる。身体中の穴という穴から吐き出される、背骨のようにいびつな真を穿つ言葉の速射砲。すべてを撃ち抜き、ついには己の肉体をも貫く脅威の弾丸。彼女への思いを抹殺するかのような抜群の切れ味を誇る叫び声は、手なずけることなどもはや不可能。持て余す愛の炎が野獣のごとく猛り狂おう。原稿用紙にたたきつけられた苦悩と絶望と悲しみは、行き場を失い、あてどなく宙をさまよい続ける。〈よろしい!/ぼくは出て行く!/よろしい!/きみの女は残る。〉
2016/01/11
Y2K☮
今月のポエム。いつの時代、どこの国でも男と女は相も変わらずトライアングラー。いいか悪いかと問われれば良くはないが、第三者が騒ぐのもナンセンス。ましてやもっと騒ぐべき難解な諸問題をスルーし、下世話で叩き易い所を叩いての善人気取りでは。マヤコフスキーにとってオシップは恩人にしてパトロン。その妻リーリャは片想いの相手。でありつつ「きみなんか要らない! 欲しくない!」と嘯く。でもある意味本心だろう。叶わぬ夢はしばしば創作の温床になる。残酷。二人でいても孤独なら尚更。芸術の正体とは死後まで報われぬ無償の奉仕なのか。
2018/02/03
cockroach's garten
ナルシズムとエゴイズムに満ち溢れた怒涛の怒涛の詩を書く詩人マヤコフスキー。彼の叶わぬ悲恋がつらつらと書かれている本書。弾丸を、死という終焉をもってして歪な関係を湮滅しようと試みる彼は、皮肉にも晩年、本物の弾丸で自らに終止符を撃つ。本書はマヤコフスキーの死の謎を暗示するような不気味さがある。まるで予告の詩。彼の死に肉体が愛の劫火で焼き裂かれるようで憎らしく思えたほど、愛を感じた女が一枚噛んでくるのだから。
2017/07/14
Y2K☮
安定や平穏を求めつつ、同時にある種の揺らぎ、刺激、ドラスティックな変化に憧れる。それが人の性。サッカーや五輪が戦争の代償行為という意見には一理ある。闘争心、競争心を失えば種として滅びに向かうのみ。気軽に読めるパンクな詩にも近い役割があるのかもしれない。実際何だかスカッとした。著者からしたら単に鬱屈した思いをナルシスティックな言葉に載せて吐き出しただけ。意味など無い。でも結構な額を出して自費出版までしたのは、吐き出すだけじゃ満たされないから。己の為に作品を創り、誰かの心に何かを残す。それこそが芸術家の理想。
2015/03/17
藤月はな(灯れ松明の火)
ソ連内で共産主義による独裁体制を批判し、暗殺されたとされる詩人。この詩に綴られているのは、友人の妻であり、自分の恋人でもあった不実な女への命が燃やし尽くすようにあふれ出る怨嗟とそれでも愛の思い出に苦しむ詩人の心情である。しかし、その女こそ、彼にとって詩神に皮肉なことに成り得ることができたのである。
2015/01/21
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