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天守物語

天守物語

天守物語

作家
金子國義/画、泉鏡花/作
津原泰水
出版社
キノブックス
発売日
2015-08-01
ISBN
9784908059209
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天守物語 / 感想・レビュー

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sin

金子國義が望んだこの本は残念ながらその急逝に依って挿絵の書き下ろしが叶わなくなってしまったとあるが、編輯の津原泰水(嗚呼、この人も昨年お亡くなりになった)に依って既存作から世界観に合うとおぼしいものを和風洋風を問わず選定し出来上がったもので、編者は選定せざるをえなかった挿絵の選択を気にしておられたようだが、案外添えられた洋風の挿絵にしてもこれは奇をてらった訳ではなく物語の内容の奥深い処をついているようで自然に受け入れることが出来た。原作から読み取る情景も挿絵に依ってもたらされるイメージも美しい作品である。

2023/02/05

藤月はな(灯れ松明の火)

まさに秋に似つかわしく、金子國義氏の画で彩る『天守物語』。アッシュ混じりの異国情緒に溢れる金子氏の絵と極彩色で典雅な和はミスマッチながらも所々に合う箇所もあり、不思議。そして黄金の装丁、青地に白鷺が飛ぶ地、紅白のスピン、解説は津原泰水さんと何とも贅沢^^獅子を夫に持つ富姫、意地汚いお殿様の首を土産に持ってくる亀の姫、朱の盆や舐めれば何もかもが蕩けてしまう舌を持つ姥などの怪異の恐ろしくも伸びやかで楽しきことよ。また、何度、読んでも、泉鏡花の美文や凛然とした台詞に惚れ惚れ。

2015/10/06

Mijas

泉鏡花と金子國義のコラボは、古典を踏まえたモダンな画文集となる。歌舞伎とギリシャ劇が融合する舞台を想像した。泉鏡花の描く幽玄な世界、台詞、語感が美しい。「前世も後世も要らないがせめてこうして居とうござんす」「あなたの睫毛一筋なりと」富姫は妖怪だが、優しさと情に溢れ「帰したくなくなった」と言う。本来人間とはこうではなかったのか?という作者の声のように思う。魔界は清く美しい世界なのに対し、人間界は、主従の理不尽さ、繰り返される戦、卑怯で醜いエゴに渦巻く。魔界と人間界の逆転劇は人間の本来の美しい心を際立たせる。

2017/04/03

Rico_bosin

泉鏡花の戯曲と金子國義の美術を,商業出版の書物として統合しようという破格の企て。懇切な解説が,なぜ鳥がモチーフなのかなど,両者の通底をあきらかにし結びつける。 装丁は表紙や題字,版面,文字の級数は勿論,花布やスピンに至るまで細心の注意が行き届く。モノとしての書物の価値を,どこまで高めることが出来るかという努力の結晶でもある。 読書の愉悦に加え,愛蔵することの仄暗い欲望を満たしてくれる本。 手近なところに置いて,にたにたしなながら,そっと撫で回すがよろしい。私はそうしている。

2015/08/18

保山ひャン

泉鏡花の戯曲に小村雪岱のデザイン、金子國義の挿絵。金子國義が2015年に急逝したため、富姫の絵以外は、金子國義の過去の作品から場面にあったものをセレクトして載せている。和のテイストの作品も多い金子國義だが、鳥のモチーフを取り入れたコラージュなど、和洋自在に選ばれている。天守の五重から糸を垂らして白露を餌に秋草を釣ろうとする侍女、「通らんせ」を歌う女童たち、生首を土産に持参する朱の盤、二度と来ないと言いながら何度でも天守にくる図書之助と天守夫人との恋、悲恋の結末をいきなりひっくり返す老人。めでたし、めでたし

2018/09/27

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