鏡花、水上、万太郎
鏡花、水上、万太郎 / 感想・レビュー
giant_nobita
表題作は伝記小説のカテゴリーに入るような作品で、水上瀧太郎から見た泉鏡花、川口松太郎から見た久保田万太郎というふうに、弟子の視点から師匠を書いている。慶應義塾、食、文学という自家薬籠中の主題だけあって著者の筆は冴えていて、鏡花は別として現在ではほぼ忘れられた作家たちにまつわるエピソードは、文学的意義にかかわらず人間的な悲哀や滑稽さが感じられておもしろいのだが、エピソード同士が継起的でなく、視点人物がころころと代わる上、自由間接話法や引用文が多用されているため、作品としての構成美には欠ける印象を受けた。
2018/01/13
nokaisho
後半6編は「en-taxi」連載時に読んでいたものだったが、連載で顕著だったかなり大胆な引用をふんだんに突っ込むなどの形式的な実験の向きは本作前半のタイトル作ではさらに。水上瀧太郎を中心とした界隈の史実をもとにしたノンフィクション小説というアイディアも面白いが、登場人物の小説だけでなく、明治生命保険の社史の引用もなされる。筆者は、どうしようもなく書かれる久保田万太郎にそれでも愛着があるように思えるが、堅気であった水上に対してはどう思っているのだろう。後半6編のうちでは佐多稲子についてのものが面白かった。
2018/01/08
暇人
文芸批評の福田和也氏の評論。文芸そのものは久しぶりだ。かつては大量生産していたのに、身体を壊されたのだろうか? 俗物な人を書かせたら天下一品なのだが、今回は抑え気味だ。同門の三田系をいじるのはアンタッチャブルなのだろうか?
2017/05/04
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