小辞譚: 辞書をめぐる10の掌編小説
小辞譚: 辞書をめぐる10の掌編小説 / 感想・レビュー
KAZOO
業界誌に発表された作品集です。10人の方の名前は知らない人ばかりでしたが辞書を題材としたもので短いものばかりですがなかなか楽しめました。私は最近の状況がよくあらわれている中川大地さんの「レキシカントは言霊生命の夢を見るか?」と落語家の三遊亭白鳥さんの「無頼漢、直治伝。」が辞書のイメージからはかなり遠い感じがしたものの話のうまさで楽しめました。
2023/01/27
コットン
辞書に関する10編のアンソロジー。こう言っては失礼かもだが、いわゆる有名作家はいない。ただ、だからこそ辞書に関する多角的な物語の方向性がいい。特に面白いと思ったのは澤西祐典さんの『辞書に描かれたもの』:小学校以来の友人がいたが中学生で彼は部活に入らず、私は陸上部に入ったこともあり取り巻く友達も変わり話すことも無くなった。そんなとき辞書を介して彼と言葉を交わす。そして「教師になった今もその時の会話が私に世界との向き合い方を教えてくれた出来事だったように思う」と言うところ。
2019/04/24
tom
最近辞書関連本を読んでいて、これもその一冊。辞書にまつわる短編集。著者それぞれに、こだわりやら思い出やらがあるらしい。私にとって面白かったのは、「せいふくのかみさま」。授業中に辞書の語釈が空欄になった事件。そして自分が書き入れる。曰く、同級生「好かれても嫌われても、面倒な存在。私は空気そのものになりたい」。制服「カラスの重い翼のようだ。群れでさかんに鳴きたてる」。なるほどなるほど。もう一つ、「ある騒動」は、大昔の写字生の物語。辞書を写字して一生を暮らした男のちょっとした陰謀を巡る顛末。これもよろしい。
2022/12/31
みつ
全く記憶がないのに「再読本」の表示が。今ほど本を読まず、かつ感想を書くことも稀だった、自分にとっての「読書メーター前史」とも言うべき時期に読んでいたらしい。辞書にある言葉を巡る怪異譚のようなものもある一方、力の抜けた作品もちらほら。仏典の書写に一生を捧げた僧の企みを述べた作が一番濃厚な味わい。一方で「宅配王子」に会いたいがため、ひたすら辞書を注文する話もある。最初の作は、自分の辞書から意味の抜け落ちた言葉に自分で意味を与えるというもの。辞書を絵画対象とした第2作も含め、学生生活と辞書は、やはり相性がいい。
2022/12/21
Kiro
スマホを辞書がわりに使っている僕にとって、辞書は憧れに近い対象です。分厚くドシっとしていて、何かあれば俺に聞けと、別に開けとも催促することのない姿は、なんだか大人な男のイメージに近くてカッコいいんです。そして開けば簡潔明瞭に「うむ、それはこういう事だ」と余計な事を語らず、自身の凄さを見せない姿には、憧れを感じざるを得ません。頂き物、学校時代からの物、うちには辞書が数冊はあったはずだけど、開いてみたいけれど開けない。安易なスマホに頼ってしまう。辞書を楽しむ大人に余裕が欲しいと、本書を読み思いました。
2020/10/04
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