世界のすべての朝は《特装版》
世界のすべての朝は《特装版》 / 感想・レビュー
uni
色に例えると透き通った白のような文章。美しいのは文章だけではなく、この特装版の装丁もフランス装仕立てのケース入りでお洒落。購入して良かったなと思いました。私は音楽を文章で表現している本があまり得意ではなく、ふたつは別のカテゴリの藝術だと思ってるのですが、キニャール氏の作品は彼自信が音楽家を目指していた時期もあったからか、音楽が言葉になっていて、読んでいると胸が締め付けられる感覚になります。高橋啓氏の翻訳ですがキニャール氏の文章を読むと斜め上の世界にうっとりと浮かんでいく感覚になるんです。伽鹿舎さんに感謝。
2019/07/07
mayuri(Toli)
とても美しい本です。静謐で、物哀しく、神聖でありながらも、身体から肉体を剥がすような烈しい感情が波の様に押し寄せてくる本です。 物語は、とても静かに紡がれていきます。音楽の話なのに、そこに音はないような。しかし、実際には本書は沢山の音で溢れています。痛々しいまでに不器用で、繊細で、情熱的な老音楽家サント・コロンブの、生き様、心臓の音、その最期の1音まで、つまり彼の人生そのものも音楽そのものではないかと思わされ、一気に、しかしかみしめるように、物語に没頭してしまいました。
2017/10/23
起死回生の一冊を求めて
「この世のすべての朝は帰ってこない」今昔物語の「蝉丸」をベースにしているが、実在した人物たちの虚構の話。行間から、文字から、登場人物たちの生き様から、音楽が聞こえてくる。1日で一気に読んでしまった。美しい小説というのを久しぶりに読んだ。良い評判ばかり聞いてましたが、実際に読んでみるとなるほど、良作。
2024/08/19
omoide_dokusyo
160ページと短くその上断章形式のため文字数だけでみれば短編小説に該当するほどすぐ読み終える。 妻を亡くした音楽家の演奏は冥界から妻がやってきたり、王の前で披露するよう勧誘も来る。 やがて娘の一人が弟子を連れて来て‥‥。 起承転結はいちおう存在しているが、かなりあっさりめなストーリーだと思う。しかし、読み応えや読後感が薄いという意味ではなく人生の断片を透かし見るような透明感のあった作品。
2023/04/13
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