「森の人(オランウータン)」が食べるブドウの味
「森の人(オランウータン)」が食べるブドウの味 / 感想・レビュー
ヴェネツィア
書くに際して、8割は捨てた取材旅行から、その捨てられた部分を語ったエッセイ。これを読むと篠田節子さんは極めて真面目であることがよくわかる。もともとそういう性格なのだろうが、取材に際しても、またそれを題材にして描く小説にも真摯に向き合う姿がよく表れているようだ。最初のトスカーナのアグリツーリズモこそ一般的だが、それ以外はなかなかに個性的な旅だ。エーゲ海でもミコノスやサントリーニではなくて、観光客がほとんど行かないアロニソス島だし、ボルネオでも夜のジャングルに分け入ったりもしている。まさに小説の成果の舞台裏。
2017/12/30
starbro
篠田節子の小説は結構読んでいますが、小説以外は初読です。本作は、取材旅行の紀行文集だと思って読み始めたら、著名人との対談、エッセイ等、盛り沢山でした。紀行文も好いですが、対談の方が断然面白い。特に夢枕獏の2本、垣根涼介、桐野夏生がオススメです。
2017/03/20
Ikutan
これが、篠田作品の原点なんですね。取材旅行の紀行文と対談、そしてエッセイもちょっぴり入って、篠田さんのハンサムウーマンぶりが垣間見れる一冊です。好奇心旺盛。とことん追求。普通二の足を踏んでしまう所にもものともせず。廃屋になった修道院。現地の旅行会社の社長も行ったことのない部族の村。ヒルが降ってくる熱帯雨林リゾート。どれもなんてディープな内容。凄いなぁと感心すること頻り。そんな中で培った豊かな知識があの骨太な作品に繋がっているのですね。そして期待通り、本音でバシバシ繰り出される桐野さんとの対談は面白かった。
2017/07/25
yumiko
取材で訪れた場所の紀行文と対談がまとめられた一冊。著者のエッセイは初読みだけれど、ピリリとくる文章はこれまで読んだ篠田作品に共通するところ。分かっていたことではあるけれど、篠田さんはかなり骨のある女性だ。あらゆるジャンルの作品を生み出しながらどれもが絵空事にならないのは、こうした丁寧な取材と分析に支えられているからなのだと再確認。「廃院のミカエル」の幻想的な描写の秘密が覗けたのも嬉しかった。対談は何と言っても桐野さんとのが面白い!並の男じゃ太刀打ちできない感じがゾクゾクするくらいかっこいい。
2017/04/06
キムチ
随筆を好まないタチ故、篠田小説の方が面白い・・が好奇心炸裂の彼女の原点が存分に感じられる文化人類学的?探訪記。写真が豊富に掲載されておりなかなかアングルやカラーも美しく土地土地の雰囲気が伝わってくる。ゴサインタン等が執筆されたのもこうして足を棒にして歩き回った賜物であろうか?種々のジャンルの方々との対談は些か面白みに温度差があるとはいえ、其々に個性豊かな展開。垣根氏いわく執筆に際しての人間描写~善悪の間で揺れ動く微妙なものありという。篠田氏は迷いあればこそのバランス感覚や寛容さを無宗教日本人の暗黙知という
2017/09/12
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