影を歩く
影を歩く / 感想・レビュー
どんぐり
自分では踏み殺せない“影を歩く” 13篇のエッセイに4篇の詩が載った本。歳月を重ねうるちに傷の痛みも和らぎ自分自身の一部となっていく〈傷とレモン〉、枯木のようにやせ細り、ひざに痛みのコブをつくって死んだ父の〈塩をまきに〉、一人出かけた徳島の旅先のフェリーから転落した夫の死亡の知らせに“死にたくて自ら死んだのだ”と直観する〈水鏡〉などが印象深い。表紙カバーに、「面影は実像ではない。空間に兆すもの。実像から生まれたもうひとつの像だ」という詩人の文章が重なる。
2020/01/04
巨峰
私たちには影がある。それは人に踏まれても、わたしは自分では決して踏めない。もしかしたら、いつか影が消えるかもしれないし、飛んでいくかもしれない。小池さんの小説のとらえどころのなさは影ににているが、どことなく現世と常世につながっていて、いろんなものが私たちの見えないところにつづいている感じ。家族とか、父とか、母とか、子供とか、それは影のように私に付きまとうが影じゃないかも、もしかしたら私があなたたちの影かもしれないですね。
2021/04/29
tom
小池昌代さんの新作。図書館で調べて発見。期待して読み始める。印象に残ったのは、粘着物になって消えてしまった夫の話。一年後に結婚する予定で同棲を始める。同棲を始めたのち、次第に関係性が変わっていく。男の姿かたち、振る舞いが変化していく。ある日男は、友人と称する知人を連れて来る。知人が男にマッサージを始める。そして、男は溶けて行き、残ったのは粘着物だけだったという話。こういう話と詩が書いている本。私にとっては、小池さん、どこかで変わってきたのかしらという感じ。
2020/01/30
くさてる
ことさらに異界を感じさせるような内容ではないけれど、気がつくと、ふっと足元にそこへの入り口が開いているような作品集。短編?エッセイ?と詩が収録されていて、静かな雰囲気。怖いというわけではないけれど、なにかが違う。良かったです。
2019/02/09
プクプク
不思議な世界観の小池さん独特のリズムと文章が好き。「傷とレモン」「水鏡」「柿の木坂」「象を捨てる」が印象に残った。 哀しみや老い、後悔というような影が「生」を照らし出す。すると本当の自分が見えてくるのかもしれない。
2019/01/25
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