桃を煮るひと
「桃を煮るひと」のおすすめレビュー
焼肉の帰りにもらった飴はぶどう味の味がする〈ぶどうあじあじ〉。調理する過程と、舌に乗せた描写が軽やかで小気味良い食エッセイ集
『桃を煮るひと』(くどうれいん/ミシマ社) くどうれいん氏は2021年に小説『氷柱(つらら)の声』が芥川賞候補になり、児童書や歌集も手掛ける作家。そんな彼女の『桃を煮るひと』(ミシマ社)は5年ぶりとなる食にまつわるエッセイ集だ。程よく肩の力が抜けた文章が小気味よいのは過去作同様。シンプルでオフビート気味の筆致は読んでいて心地よく、胸のすく思いだ。 著者が食に対して貪欲なのは明々白々だが、グルメや美食家というのとはちょっと違う。高値のものばかり食べているわけじゃないし、とりわけ舌が肥えているとも思えない。実際、俎上に載せられている食べもののほとんどが、たくあん、塩味おにぎり、ジャガイモのみそ汁など、素朴な味わいのものである。 それらを調理する過程と、実際に舌に乗せた際の描写が実に軽やかだ。ありふれた食べものの美味しさをこんな風に表現できる人が、果たしてどれだけいるだろう。近しい作風の漫画として、『花のズボラ飯』や『孤独のグルメ』などが挙がるが、くどう氏のチャーミングな性格や、起伏と抑揚に富む語り口は唯一無二だ。 何を食べても何か思い出す、というのも本書の特…
2023/11/22
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桃を煮るひと / 感想・レビュー
いつでも母さん
『氷柱の声』でガツンとやられた(褒めてます)くどうれいんさん。5年振りらしい食のエッセイを楽しく読んだ。タイトルが気になり、カバーは桃だよねって独り言の私。こう言うの好きだわ。寝る前に少しずつ読むはずがつい・・あっと言う間に読了してしまった。一番のお気に入りは『キャベツとレタス』そして、あとがきも私の好みだった。
2023/09/30
ぶち
読友さんのレビューでこの本に魅かれました。実は、この作者のことはまったく知らなかったんです。歌人で、小説、エッセイ、絵本などでも活躍されているんですね。歌人だからでしょうか、この"食エッセイ"に綴られている文章のリズムがとても心地よいです。私たちでも普段から使っているような等身大の飾らない言葉なのに、その一つ一つがなんとも魅力的に感じられます。-->コメント欄へ続く
2023/10/17
tenori
くどうれいんさん、封印を解く。5年ぶりの食エッセイは彼女の『つくる食べる語る』がまるごと詰まっていて、そこからお裾分けをいただいているような幸せな気分になれる。なんせ「桃を煮るひと」なのだ。その光景を想像してみよう。おしゃべりのようなリズム感とわかりやすい文章、語彙と表現力の豊かさ。すぐに読みきれてしまうけれど、もったいないから一話ずつ、ゆっくり咀嚼する。食べるという避けては通れない日常を、くどうれいんとともに。
2023/06/21
夜長月🌙@新潮部
くどうさんは「ひとりでご飯を食べられない」。そこで見知らぬ一読者に突然声をかけて食事に誘うことが結構あるといいます。読者なら赤の他人よりは私を知ってくれているという思いからとか。今回も食のエッセイですがグルメのように食にこだわりのある人と見られるのがとても嫌なようです。お米に塩だけでもよい。たくあんの一切れでもよい。どんなシチュエーションかとかどんな思い出が詰まっているかなどが大切なのでしょう。
2023/07/27
はっせー
久しぶりのくどうれいんさんのエッセイ。やっぱりいい!本書は食にまつわるエッセイとなっている。よくこのような食にまつわるエッセイを読む。その際、お腹が空いたり、文章から匂いを感じるときはたまにある。だが、本書はさらにそのさきまである。それはくどうれいんさんと同じことをするということである。例えばとりあえず炒飯。くどうれいんさんが町中華に行ったとき、メニューが多くて決められないときのルールである。そのルールで私も町中華を食べた。やっぱり良かった!
2024/08/11
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