魔術師: 谷崎潤一郎妖美幻想傑作集
魔術師: 谷崎潤一郎妖美幻想傑作集 / 感想・レビュー
優希
人の及ぶところのない世界がある時代の耽美小説だという印象を受けました。不思議な森羅万象に異形の念は、今では失われたものであるのですね。失われた空気に包まれるせいか、数々の短編に魅せられました。
2021/06/20
SIGERU
長山靖生編による、谷崎潤一郎の初期短篇アンソロジー。『細雪』『春琴抄』の、日本の美を詠う文豪とのイメージのまま本書に接した読者は、似ても似つかぬ異形の作家を見出すにちがいない。『刺青』『秘密』『魔術師』で、美の使徒として妖艶の気を吐いた谷崎。『憎念』『私』で、露悪的なまでの自己告白を試みた谷崎。作家としての相貌は多岐に亙り、大雑把に文豪と括るのも躊躇われる程だ。美と醜とが複雑に絡み合った混淆ゆえに、編者は本書を「妖美」と名づけたのだろう。「美には何処か奇異なところがある」。ボードレールの評言を想起した。
2021/02/11
凛風(積ん読消化中)
『刺青』『秘密』『憎念』『人魚の嘆き』『魔術師』など15篇を収める。谷崎潤一郎は、10代の頃『春琴抄』を読んで以来、アンソロジーものに含まれている作品を読むくらいで、まぁ、最近、乙女の本棚シリーズで『秘密』を読んだりもしてはいるが、ビッグネームな割には、ほとんど読んだことのない作家だ。この本は「妖美幻想傑作集」の副題に惹かれて読んだのだけれど、若干肩透かし気味。もっと、フェチな作品が読みたかった。今度は長編を読んでみよう。
2020/10/24
relaxopenenjoy
谷崎の新刊は珍しい気がして読んでみた。収録15編のうち憎念、覚海上人天狗になる事、少年の記憶、生れた家、恐怖、詩人の別れ、二月堂の夕を読む。既読(刺青、秘密、人魚の嘆き、魔術師、人面疽、或る漂泊者の俤、私、ある罪の動機)を除くとパッとしないが、鉄道恐怖症を描く「恐怖」がまあ印象的だった(谷崎の実体験に基づく?)。「天狗」だけは漢文古文が2度読んでも理解できずお手上げ。妖美幻想傑作集、とあるが、短編からミステリからエッセイまでなんかごった煮感。メモ パンの会、足穂 星遣いの術。
2020/12/29
hiro6636
人魚の嘆きなど。
2022/08/12
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