どんぐり
どんぐり / 感想・レビュー
こーた
寺田寅彦の(と云うよりは日本近代文学の)名短篇「どんぐり」と、その弟子・中谷宇吉郎による解説(と片づけてしまうには勿体ないくらい見事な名随筆)「『団栗』のことなど」を並べて読める仕合わせな一冊。装幀も見事で、手元において折にふれ読み返したくなる。寺田寅彦は当時のこの国の家族制度を疑い悩んでいたふしがあって、その先見性に唸らされると同時に、その家族観の未だほとんど変わっていないことに絶望する。妻に先立たれ、自身も病弱だった。弱さに立つ視点には、いまこそ耳を傾けるべきでは、と思わされ、もっと読みたくなる。⇒
2023/06/25
アキ
「コロナ禍が続き、受け身にならざるを得ない状況の中で、何かできることはないかと思いめぐらすと、心に浮かび上がってきたのは、文学の香りたつ本を今こそ作りたいという思いであった。(中略)自由に動けない今のこのような時期に、一人一人に手渡すような気持ちで本作りを始めることに意味があるように思えてきた。」選者あとがきより。灯光舎本のともしびシリーズ第1巻。しかと受け取りました。何度も読み返したくなるような美しい文章。「どんぐり」「コーヒー哲学序説」寺田寅彦、「『団栗』のことなど」中谷宇吉郎の3篇。全巻購入します!
2021/03/18
Y2K☮
衝動買い。寺田寅彦の文章に初めて触れた。エッセイと随筆の違いはわからないけど、きっとこれは名随筆だ。中谷宇吉郎の「『団栗』のことなど」も同じ。併せて読むと、軽々しく言葉へ換えたくない感情が胸に渦巻く。某感染症の恐怖を必要以上に煽る報道が幅を利かせていた2021年に本書を編んだ意図を想像したくなる。あと灯光舎のこのシリーズは装丁が素晴らしい。色合いと手触りを楽しむことまで含めた贅沢な読書をさせてもらった。電子書籍やオーディオブックの普及は間違いなく必要なこと。それでもなお紙の本がいちばん好きだと確信できた。
2023/10/17
kochi
若くして学生結婚した寺田寅彦が東京で病を得た妻と暮らした日々を描く「どんぐり」と、弟子筋にあたる中谷が寺田の日記をもとに、師の生涯を振り返った「『団栗』のことなど」が配されたコンパクトな山本善行さん編の本。亡妻の忘れ形見である長女みつ坊と同じ植物園でどんぐりを拾う時、妻の面影を見て遺児の幸せを願う場面で終わる印象的な一編の物語を、中谷は日記などから補った背景を加えて、また違った角度から物語を紡いでいく。それぞれの作品は青空文庫でも読めるが、二つが一つの本になることに意味がある。編集の力というものを示すか。
2022/01/31
しましまこ
大好きな『どんぐり』が素敵な装丁で。「コーヒー哲学序説」を挟んで中谷宇吉郎の「『団栗』のことなど」泣ける。一家に一冊お勧め本。
2022/10/10
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