石ころ路 (灯光舎本のともしび)
石ころ路 (灯光舎本のともしび) / 感想・レビュー
アキ
「灯火舎・本のともしび」第ニ弾。「どんぐり」に引き続き、読了。灯火の中抜きのマーク、題字のバックの青い色が煌めくしっかりとした装幀は野田和浩。京都の古書店主・山本善行編の田畑修一郎の三小篇。「木椅子の上で」「石ころ路」「あの路この路」昭和十一年から十五年にかけての小説。どの短編も土地とそこで生活する人々の懸命さと儚さを感じさせる。若くして死んだ三崎や、三宅島の雄山から海への断崖からの落下の空想、義母の死と娘夫婦の破綻というそれぞれの内容に、著者が40歳にして亡くなったという人生が重なって見えてしまう。
2021/12/26
さらば火野正平・寺
この灯光舎・本のともしびシリーズは装丁が素晴らしい。まだシリーズ2冊目だが、どれもきちんと読み切れる薄さと、薄いのにしっかりとした装丁&造本で美しい。読まれる事に重きを置けば、薄いというのは良い事だと思う。読書に苦手意識がある人にも親切である。この作者は知らなかったが、本書の短編はどれも面白く、さすが撰者の山本善行は古本屋さんだけの事はあるな!と感嘆していたが、青空文庫に何作も出ていた(笑)。表題作も青空文庫で読める。私の目が節穴なだけであった。しかしこの人の、島を舞台にした短編は良い。是非読んでみて!。
2021/08/01
だいふく
全く知らない作家さんだったけれど、本のともしびシリーズ第二弾ということで購入。一作目に続き、装幀が美しい。青の部分にホログラム箔が使われているので、光の加減できらめく。 『木椅子の上で』『石ころ路』『あの路この路』の三作が収録されている。どれも読んでいるとやるせない気持ちになるけれど、最後は少し救われた感じがした。『石ころ路』の「指の先きのしびれるような感じが残っていた」の余韻が心に残る。
2021/12/24
michel
「木椅子の上で」「石ころ路」「あの路この路」の三作収録。また素敵な作家さんと出会えた。宇野浩二に師事し、木山捷平、尾崎一雄らとの交わりがあった、という田端修一郎。病いや生活苦に虚無感が暗く漂う。が、風景の一つ一つがとにかく丁寧に描写され、人物の一人一人の描写もまた情趣に富む。それらが相まって、陰鬱さの中に親しみが味わえる。編者は京都の古書店の店主山本善行。(上林暁「星を撒いた街」の編者でもある)
2023/05/20
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