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木の十字架 (灯光舎本のともしび)

木の十字架 (灯光舎本のともしび)

木の十字架 (灯光舎本のともしび)

作家
堀辰雄
山本善行
出版社
灯光舎
発売日
2022-08-15
ISBN
9784909992536
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木の十字架 (灯光舎本のともしび) / 感想・レビュー

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アキ

堀辰雄の短編集。灯光舎・本のともしび第三弾。撰者・山本善行、装幀・野田和浩。相変わらず美しい装幀に痺れます。「旅の繪」大正七年JUCHHEIMの獨乙菓子屋で過ごしたクリスマスイブの霧雨とハイネの詩。「晝顔」藝妓のお照とモオパスサンと弘ちゃん。「青猫について」萩原朔太郎への思慕と詩・海鳥の象徴性。「二人の友」中野重治と窪川稻子の思い出。「木の十字架」立原道造から結婚祝いに貰ったドビュッシイの歌のレコオドをはじめて聴いたのは、彼が夢みたいに死んだ後からだった。撰者あとがきで堀辰雄作品の魅力を語っています。

2023/04/04

Y2K☮

初の堀辰雄。「風立ちぬ」のあらすじを何となく知っている程度の認識しかなく、読了してもまだ確たるイメージは抱けない。ただ昨年刊行されたこの短編&随筆集に表題作を選んだ編者の意図は伝わった。ドイツがポーランドへ宣戦布告した翌日の教会。戦争を始める人は最前線で自ら武器を取って戦うわけではない。業界の未来がどうこうと語る書店業界のお偉いさんが人手不足&激務&安月給の現場で働いていないように。萩原朔太郎の「青猫」を読みたくなった。あともしこのシリーズの第二期が出るなら、芥川龍之介の「蜃気楼」と「海のほとり」をぜひ。

2023/11/15

kankoto

善行堂の山本善行さんの選書シリーズ今回は堀辰雄。「旅の繪」は神戸が舞台のエキゾチックで不思議なムードのただよう短編。「晝顔」はちょっと昔の長屋が舞台で少年と芸妓に出る様になったばかりの従弟の話。そのお照が読んでいるのかモーサッパンでモオパスサンと書かれているのが印象的。心に刺すのは立原道造の事が描かれている「木の十字架」立原が恋人と軽井沢の堀辰雄宅のベランダで過ごした様子などをぼんやりと思い浮かべる。 毎回、善行さんのあとがきも楽しみのひとつ。野田和浩さんの装幀、今回は白樺の木肌をイメージされてるらしい

2022/09/01

michel

「旅の繪」冬の神戸への旅の記憶が綴られる。不思議で不気味な香りが漂う。「晝顔」藝妓に出るようになったお照と従弟の話。子供以上大人未満のふたりの微妙な心理描写が素晴らしい。「「青猫」について」萩原朔太郎との回想を綴る。堀辰雄の本への向き合い方(付き合い方)に感じ入る「二人の友」中野重治と窪川稲子。「木の十字架」親交のあった立原道造への追慕。ドビュッシーの晩年の歌曲「もう家もない子等のクリスマス」が印象的。風景、音楽、反戦、親しい人を失った喪失感、それらが一体となる。祈りの一作。

2023/08/28

yumicomachi

美しい装幀の本で堀辰雄の小品に向き合う贅沢さは、全集や文庫や電子書籍で読むのとは全くちがう読書体験であった。「旅の絵」の主人公は何のために神戸を旅行したのかわからないが、内的必然に動かされていることが伝わってくる。「昼顔」での若い男女の微妙な心理描写は巧みで魅力的。萩原朔太郎についての文章「「青猫」について」は詩論としても素晴らしい。「二人の友」を描写する筆致の確かさ。「木の十字架」には年下の詩人・立原道造への哀悼の気持ちと平和への願いが古い聖歌のように流れている。撰者あとがきも良い。2022年8月刊行。

2022/08/23

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