無垢の歌: 大江健三郎と子供たちの物語
無垢の歌: 大江健三郎と子供たちの物語 / 感想・レビュー
amanon
後書きにもあるように、評論というよりエッセイ的要素が強い大江論というべきか。思ったよりサクサク読み進めることができたが、同時に大江の作品がもつ濃密さやテーマの深さと重さを改めて痛感。そして同時に独自のユーモアや優しさも湛えていることに改めて驚かされる。ただ、頁数による制限もあるのだけれど、つい最近読み終えたばかりの、『燃え上がる~』などの後期の作品が取り上げられたなかったのが残念。また、個人的にはそのラストになぜか「ロック」を感じた『洪水は~』について触れた際、いみじくもロックに言及しているのに驚き。
2024/09/14
ジャン
大江健三郎の小説は読むと面白いのだが、その濃密さのあまり読み切った頃にはぐったりと疲れていて、その小説の全体像までを改めて見通すことが難しい。その点、本書は平易な言葉でありながら、大江の小説の本質を的確に拾い上げており(しかも引用の縦横無尽ぶりに驚く)、読んでいる間、大江の小説を読む高揚感を追体験する感覚になった。著者曰く、本書は大江の前半部分に焦点を当てているとのことで、確かに『燃え上がる緑の木』に言及がないのはおかしいなと思っていたので、是非取り上げていない作品についても文章を書いてほしい。
2022/09/11
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