チャペック小説選集 (1) 受難像
チャペック小説選集 (1) 受難像 / 感想・レビュー
Kota
謎はあるが答えはない。出発点はあっても着地点はない。物語も登場人物もいつのまにかかき消えて、ただ語りだけが残る……幻想的で、他に類のない味わい。解説によれば、感情表現の重視と放漫な構成、単語の累積といった表現主義と、断片を再構成するキュビズムの手法、さらにベルクソンの直観も影響しているとのこと。日常の時空がふと断ち切られる刹那に敢えて踏み留まり、不合理と不条理のさなかに存在の意味を探り、祈りでも希いでもない垂直な思考が、神なるものを志向する。顕現する奇蹟。だが目の当たりにしても、誰も奇蹟とは見ないのだ。
2019/09/07
twinsun
連作であるが、物語が謎解きとして展開せず、登場人物に共感しようとすると不安になり、その不安は登場人物同様未来が読めないだけでなく、登場人物の置かれた状況の寒々しさが空気として自分にまとわりつかれるのを感じられ、崖っぷちから落ちて終わらすこともできるがその足は凍り付きいつまでとなく立ち尽くすようでもある。闇を知りたければ覗いてみることだ。
2022/01/19
amanon
幻想小説的な要素もあると言っていいくらいに摩訶不思議なカラーが強いのだけれど、それと同じくらいにどこか透徹した理知的な要素も感じられるのが印象的。この作風にムージルに似た物を感じたのだけれど、ムージルも実はチェコ系だということが判明。このあたりは探求の価値があるのでは?それから作品の中でかなり頻繁にキリスト教に関係している記述が見られるのも気になる。作者の宗教的背景についてもっと知りたいのだが…一部はまだある程度具体的なストーリーが存在していたが、二部の作品は幻想的な寓話という要素が強いか?
2012/08/31
nukuteomika
ミステリ形式で展開される哲学的議論。短篇全部がそれというのもすごい。訳文がまずすぎるのが残念
2009/11/14
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