わが家の人びと: ドヴラ-トフ家年代記
わが家の人びと: ドヴラ-トフ家年代記 / 感想・レビュー
新地学@児童書病発動中
作者の一族を飄々としたユーモアで描く小説。最初の「イサークおじいさん」の話は、典型的なほら話といった趣だが、次第にそれぞれの話が苦汁を帯びてきて、ソ連の過酷な政治状況に対抗するために、作者がこれを書いたことが分かってきた。一番の好みは「アロンおじさん」だった。病気のために何度も死にそうになるこの人物は、その度に作者を叱ってきたことを謝る。作者が叱られたのは、おじさんの思いやりからだった。ソ連の社会からはみ出し続ける作者の身の上を心配してからだと分かり、ほろりとする。当時のソ連の実状が分かる貴重な小説。
2016/12/15
燃えつきた棒
冒頭の「イサークおじいさん」で、いきなり笑ってしまった。 さすが、沼野先生が推すだけのことはある。 一遍でファンになってしまった。 沼野先生の『亡命文学論』を読まなかったとしたら、たぶん僕がドヴラートフに出会うことはなかっただろう。 先生に感謝したい。/ ここには、ロシア文学といえばおなじみの大きな物語は、どこにもない。 映画で言うならマイケル・ウィンターボトム「ひかりのまち」のような小さな人々の小さな物語だけがある。 なのに、その小さな物語に、なぜか惹きつけられてしまう。/
2022/08/16
Nobuko Hashimoto
面白かった。ユーモアがあって、くすっと笑える部分多し。ロシア文学には珍しい軽妙な文体の短編集。時代的にはソ連誕生前後から80年代のはじめまで。誰それが銃殺されたとか誰それが刑務所に入れられたといったエピソードも多いが、作者は78年に西側に亡命したので、そんな話さえもソ連(ロシア)への郷愁を感じさせる。といっても彼の書くものは自伝的要素が強いものの、虚実混ざっているとのことだが。彼の作品の邦訳は本書と『かばん』くらいのよう。もっと読みたいなあ。表紙の絵がイメージに合っていて好き。
2019/02/27
ぱせり
途方もない家族。飄々としたユーモアに包まれた数々の逸話に混ざる旧ソ連体制下の悲しく苦い現実。それを突き破るおおらかでたくましく愛情深い人々が大好きだ。巨人のようなおじいさん、ハチャメチャな天才いとこ、詐欺師のおじさん、娘にしてあげた寓話・・・忘れられない。大切な家族の物語。
2014/07/14
relaxopenenjoy
現代ロシア作家。アメリカへ亡命。おじいさんから、おじやおば、いとこ、父、母、飼い犬、妻、娘、息子迄の自伝的連作短編。風刺が効いていて、面白かった。とくに校正係だった母のエピソードや、娘が入院した際の面会の顛末など印象的だった。邦訳があまり無く、「かばん」も読みたいんだけど、図書館に無い。。
2023/01/15
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