亡命ロシア料理
亡命ロシア料理 / 感想・レビュー
星落秋風五丈原
ロシアンエッセイといえば故米原万里さんが面白かったがこちらも単にロシア料理を紹介しているだけではなくジャンクフードを食べながらダイエットに血道をあげるアメリカを揶揄したりしていて面白い。料理って奥深い。
2015/08/22
きりぱい
ロシア料理は壺から生まれた?壺に玉ねぎみじん切りと牛ヒレ肉を入れ、水も塩も加えず蓋をして天火で2~3時間。じっくり蒸されてスープに浸かった肉はふわとろ、ソースはサワークリームにマスタード、ニンニクなどの香菜風味。ああ、おいしそう!なのに、この本はレシピ本ではない。アメリカに亡命したワイリとゲニスがロシア料理を懐かしんで紹介するエッセイ。文芸批評家の二人が本国ロシアのじっくり時間をかけた料理に愛着を深めつつ、アメリカのジャンクフードをののしったり、西欧文明をあげつらう機知にとんだ語り口が面白い。
2012/10/08
三柴ゆよし
ロシアからアメリカに亡命したふたりの文芸評論家による軽妙洒脱な料理エッセイ。自国の料理をマンセーしながらアメリカのファストフードをけちょんけちょんにやっつける、という天丼芸に噴き出しながら読んだ。故郷の魂というべき料理の数かずを懐かしみながらも、そこにあるもので最大限の楽しみを得ようとする前向きな姿勢にもグッときた。それはともかく紹介されている料理がとにかく美味そうなので、文字だけで食欲が刺激される向きにおいては注意されたし。重厚なロシア文学とお付き合いするときには、是非とも隣に置いておきたい一冊。
2016/01/28
ももみず
料理は愛である!文明への愛。歴史への愛。そんなロシア料理に対する(そして亡命してきたロシアに対する)愛を感じずにはいられない、軽妙ながらも熱い一冊でした。訳者あとがきにも書かれてたけど、ロシア人のエッセイって「エッセイ」と呼ぶには固すぎる印象が強いなかで、この本の力の抜け方は絶妙。「いい料理とは、不定形の自然力に対する体系の闘いである。おたま(必ず木製のでなければならない!)を持って鍋の前に立つとき、自分が世界の無秩序と闘う兵士の一人だという考えに熱くなれ。料理はある意味では最前線なのだ……」(p.46)
2014/11/17
きゅー
アメリカに亡命したロシア人が書いたロシア料理の本。楽しかった。各章の名前からして面白がらせようという魂胆がたっぷりで「素晴らしきこの魂の高まり」なんて大上段のものから、「キノコの形而上学」、ついには「スメタナを勧めたな!」までいきつく。確かに料理の本だけど重要なのは”亡命”の部分。自嘲的な語り口が癖になりそう。真面目な料理の本だと思って手に取った人は目が点になるはず。
2012/02/01
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