南仏の光、イタリアの風
南仏の光、イタリアの風 / 感想・レビュー
ふう
ストーリーらしきものはない。見開きの片面は美しい風景画。といっても少年や、リュックや、脱ぎ捨てられた赤いジャケットや、並べて干された洗濯物の濃い影や、さまざまな人の息づかいがある。色遣いが抜群に美しい。宝石のようにキラキラした幼い頃の思い出が脈絡もなく綴られて、入り込むには時間がかかったが、入り込めた途端、まるでサウンド・オブ・ミュージックの家庭教師と子どもたちさながらの空気感が溢れた。バーカウンターの絵がなんともお洒落。文章側のページにも必ずある小さな絵が、どれも洒落て粋。深夜も早朝も、色が素晴らしい。
2021/08/13
たこい☆きよし
南仏とイタリアで過ごした著者の幼い頃の想い出がシンプルな線とコントラストを強調した画風で描かれる。淡い水彩でにじみもあるものの、1980年代に流行ったカラートーンをざっくり配置したマンガやイラストに風合いが近い。絵本だけど文章は多めで、訳文がリズミカルなのは、原文のニュアンスをなるべく伝えようとしたのかもしれない。著者は日本で共感してもらえるか心配していたっぽいけど、幼少期に親戚の子どもたちが集まっていたのが終わりを告げる日がいつかくるという感覚は共通だろう。千明初美『いちじくの恋』をちょっと連想した。
2024/04/19
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