マリクロワ
マリクロワ / 感想・レビュー
NAO
マリクロワ家の最後の一人となったマルシアルが相続することになったわずかばかりの土地と家畜。放棄してしもいいのだが、公証人の言動に悪質なものを感じ、マルシアルは遺産相続のための条件「3ヶ月島を離れない」を実行する。舞台はローヌ河河口の沼沢地であるカマルグ地方。アルル近郊で地中海に近いが、冬は風が吹き荒れかなり寒い。この遺産相続は、物質的に誰かがひどく得をするわけではない。これは、マルシアルがマリクロワ家の血をひいているということを身をもって証明するための通過儀礼であり、マルシアルの成長物語である。
2022/06/09
syaori
これはメグルミューからマリクロワへのメタモルフォーゼと、マリクロワ一族の贖罪の物語だったのでしょうか? 金髪のデルフィーヌと白い牡牛から始まる罪と没落、残された土地での簡素な生活。母方の大伯父(最後のマリクロワ)の遺言に従ってその生活を引き継いだ主人公の、水に囲まれた土地の土の香りさえ感じられるような日々と土地の名を持つ女性の出現…。まるで神話なのですが、しかし大伯父の遺志を実行した彼がその土地の名を叫んだとき、一人のマリクロワの顕現と「厳しい楽園の到来」をはっきり見たとは思うのです。アンヌ=マドレーヌ!
2017/07/28
cue.1
←外伝「シルヴィウス」に感想前半○◎「マリクロワ」は庭園・農園のような父系の気質を継ぐ主人公が、荒野のような母系を継ぐまでを描く、鎮魂のための物語。外伝には“自然-人間”のデルフィーヌがいる。本作での“感覚している私”が語られるのだろうか。散文詩小説的でブローディガン西瓜糖(メグルミュー:アイデス、マリクロワ:虎、シルヴィウス:インボイル)のようでもある。ネイチャーライティングとロマン派をあわせたような作風、詩(バシュラール)に関心がある人には興味深く読めると思います。
2015/01/11
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