橋爪大三郎の社会学講義
橋爪大三郎の社会学講義 / 感想・レビュー
空箱零士
この本は、日本語で書いてある。そんな当たり前のことを記しているように、「日本」の社会学の基礎を語るべくまとめられた論集だ。社会学の概論から始まり、政治・経済・文化・宗教と各論的に話が展開される。地下鉄サリン事件の時期に書かれているだけあり、日本の不安定な世相の根底をなす日本社会の未成熟を問い直す内容が顕著だ。とりわけ西欧と比較して政治思想が未成熟であるという論調は一貫し、天皇制に象徴される責任の不在に根底を見出しているようだ。徒に西欧と比較する是非はさておき、日本の「思想」の困難さの一端は伺る一冊である。
2015/03/24
てながあしなが
読書旅に持っていったきり、そのまま放置してしまっていた本。寝る前と電車でコツコツ読んだ。相変わらず橋爪大三郎は自分の好みだ。ただ、やっぱ今読むとなったら情報は古いかな。オウムの事件があったころに書かれているようなので、最後の宗教の章にそのことについてずいぶん紙面が割かれている。西部邁との対談では、意見が割れていて面白い。
2017/12/25
TANA
簡易に書かれているけど、ボリューム感はあった。前半は、まさしく「社会学“講義”」というかんじで非常に勉強になった。後半は、寄せ集め的な時事ネタが多かった印象。時事ネタがきちんと「講義」の文脈へ昇華されてはいるのだけど、さすがに鮮度落ちというか、読むのがちょっとしんどかった。全体としては読みやすく、しかもタメになる本ではある。「入門」としてススメるには、やや断片的にすぎる気もするけどね。
2014/05/05
星規夫
日本(人)の無思想性に対する批判は何度も聞いてきたが、その度にどうしようもなく不安な気分というか、自分を全否定されたような気持ちになる。自分は「思想」を持てないロクデナシなのか……と。尤も、こういう批判自体が欧米風の考え方に毒されていると言うことも出来るかも知れない。「思想」という内的原則に縛られて他者や集団と衝突し、孤立する危険を犯すくらいなら、そんなものなどない方がマシだ、と悪魔が囁く。しかし、それではイカンよなあ。それでは、本当の意味で倫理的な人間になることなど夢のまた夢だ……。
2013/03/26
river125
まず社会科学というのがあって、その中に政治学、経済学、法学、社会学、人類学などがある。政治学は政府の行動を、経済学は企業の行動を、法学は裁判所の行動を、それぞれ研究する。対象を限定している分、論理も具体的で説得力がある。これに対して社会学は、社会を、つまり人と人との関係を多角的に研究する。こういう前置きに続いて、政治、民主主義、資本主義、結婚、天皇、オウム真理教といったトピックに関する思想が展開された本。
2011/12/28
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