遊星の人: 多田智滿子歌集
遊星の人: 多田智滿子歌集 / 感想・レビュー
cue.1
◯◎短歌形式ゆえの高揚感は弱いのに満足できる一冊でした。意味と主体意識を翻しては、生も死も自己も花びらのように踏み越えてゆく…死後刊行の歌集です。ときにはドキっとする状況も詠まれている。‘受胎告知’‘五連彈’。そして‘薔薇窗’から状況を俯瞰することで受けとめていく様子。または、永劫の‘薔薇’‘はなむぐり’‘くちなは’に身を溶かす。序盤に「フーコーの振り子」最後に「薔薇の名前」がモチーフに使われていて、書物と虚実の鏡を自在に渡り歩くような歌人に眩暈する。不死なのだろう。
2015/02/09
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