常世の舟を漕ぎて 熟成版 (ゆっくり小文庫)
常世の舟を漕ぎて 熟成版 (ゆっくり小文庫) / 感想・レビュー
slowpass
読書会のため再読。「本来、責任とは痛みの共有」という指摘をこえた責任の定義にその後出会えていない。何でもかんでも既知の綺麗事におしこんで、欺瞞や矛盾を塗りこめる社会から出るガスに窒息しそうだった。緒方さんのことばは擬態したその欺瞞を裂き、その亀裂から息をつける空気を入れてくれた。人間は自己疎外から逃れえず、それを壊す他者性を必要とする。破壊する魔女ランダと秩序をつくる聖獣バロンの永遠の戦いが世界をつくる。出来たものは固まり、壊されずには新しくなれない。世界の両義性を拒絶した近代を個が越えていく。
2024/11/02
こもれび読書録
今までで最も衝撃を受けた本だった。縁あって水俣に行き、水俣病事件のリアルさに触れ、栗原彬さんの本で緒方さんを知った。アカデミズムの外の人が時代をこえた思想をもつということにも強く感銘を受ける。 「みんな多かれ少なかれ泥棒じゃないですか。スーパーで買えばそれで合法、と言ってすむ問題じゃない。スーパーなんていうなれば、泥棒たちの分配センターで、銭はそこの通行証みたいなものでしょ。」 全ての人は泥棒で、加害者性をもっている。この人間観が時代に必要なのだと思う。R.Y
2023/09/03
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