教育
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性の倫理観がぶっ飛んだ「ありえない世界」に引き込まれる! 平成生まれ初の芥川賞作家・遠野遥の新作小説
『教育』(遠野遥/河出書房新社) 2019年に第56回文藝賞受賞の『改良』(河出書房新社)でデビュー、翌年に第163回芥川賞受賞の『破局』(河出書房新社)と、立て続けに作品を発表する1991年(平成3年)生まれの小説家・遠野遥氏。新作の『教育』(河出書房新社)は、著者初の長編作品です。前2作までは、明るくも乾いた独特の虚無的な文体に定評がありました。 本作では、「ありえない世界」にトリップしたかのような雰囲気が最初の数ページでたちこめていて、序盤からアクセル全開です。それもそのはず、舞台は「一日三回以上オーガズムに達すると成績が上がる」という、現代社会の基準で考えるならばデタラメな信念を軸にする寮制学校です。 生徒たちは成績に応じて部屋がランクアップするという設定で、主人公の男子生徒は誠実に一人部屋ランクを目指しています。学校での生徒たちの行動は、モニターを通して先生によって管理されており、学習する内容のひとつは、モニターに表示されるカードの裏面の絵を当てるという超能力じみた技能です。 学校生活における性行為へのハードルは極めて低く(でも多少の人間関係のいざこざや…
2022/1/27
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2022/1/23
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