おいしいごはんが食べられますように
「おいしいごはんが食べられますように」のおすすめレビュー
誰かが放り出した仕事のしわ寄せはどこにいくの? 読む人の心をざわつかせる仕事+食べもの+恋愛小説《芥川賞受賞作》
『おいしいごはんが食べられますように』(高瀬隼子/講談社) 悪気がなく正しさを押し付けてくる人がどうしようもなく憎く思えてしまうことがある。「コンビニ飯ばかり食べるなんて体に悪い」「忙しくても自炊した方がいい」「体の調子が悪いなら仕事は休んだ方がいい」。…いや、至極その通りなのだけれども、そうも言っていられないのが日常ではないのだろうか。正論に否定的な感情を抱く自分がおかしいのか。消化できない思いばかりが胸の中に残る。 第167回芥川賞受賞作の『おいしいごはんが食べられますように』(高瀬隼子/講談社)は、そんなモヤモヤした思いを描き出した中編小説だ。作者は、すばる文学賞受賞作『犬のかたちをしているもの』(集英社)や芥川賞候補作『水たまりで息をする』(集英社)で知られる高瀬隼子さん。彼女の作品はどの作品も、読んでいると心がざわつき始め、いつしかそれが癖になってしまうが、本作でもそれは同様だ。温かみのあるタイトルと、かわいい絵柄の書影に決して騙されてはいけない。この本は、職場でのままならない人間関係を描き出す、仕事+食べもの+恋愛小説。不穏な空気が読む人の…
2022/5/12
全文を読むおすすめレビューをもっと見る