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ファラオの密室

ファラオの密室

ファラオの密室

作家
白川尚史
出版社
宝島社
発売日
2024-01-09
ASIN
1242309
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「ファラオの密室」のおすすめレビュー

『このミス』大賞受賞作『ファラオの密室』は波瀾万丈な展開と読後感がすごい。ミイラが古代エジプトで事件捜査!?

『ファラオの密室』(白川尚史/宝島社) 「このミステリーは間違いなくすごい!」。そんな確信がひたひたと心を満たしていく。毎年、読む人に驚きと感動を与えてくれるミステリーの新人賞『このミステリーがすごい!』大賞・大賞受賞作は、今年も素晴らしいのだ。栄えある2024年・第22回の大賞受賞作は『ファラオの密室』(白川尚史/宝島社)。紀元前1300年代後半、古代エジプトを舞台とした物語だ。それだけを聞くと、「古代エジプト!? 全く知識がないけれど、物語に入りこめるだろうか」と感じる人も多いのではないだろうか。かく言う私も、その一人だった。読み始める前は、それこそ砂埃舞う砂漠を一人彷徨うような不安を感じていたはずなのだが、ページをめくれば、そんな不安はどこへやら。古代エジプトを舞台に繰り広げられるミステリーは、スリルあり、笑いあり、涙あり、感動あり。読後、こんな爽快な気分にさせられるとは思いもよらなかった。 主人公は、王墓(ピラミッド)の内壁に呪文を刻むという大仕事を主導していた上級神官書記のセティ。半年前に命を落としてミイラにされたセティは、どういうわけか、心臓に欠けが…

2024/1/9

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