家には母の婚礼家具のきもの箪笥がある。しかし、母もわたしも、きものを取り出して着ることはない。祖母のきものは、長いことそこで箪笥の肥やしになっていた。なにしろわたしは、成人式にも振り袖の代わりにマッキントッシュを買ってもらったくらい、興味がなかったのだ。なのに、二十代の終わり、わたしは一転して、きものに首ったけになった。そして、文学ニートだったわたしは、きものにドはまりした。お金もないのに、である。
新しい草履を買いに行かなくちゃ 一度は情熱を傾けたきものから、すっかり遠ざかってしまっていた。数え上げればきりのないその要因の一つに、草履があった。 わたしが持…
文芸・カルチャー
2024/4/25
母のきもの箪笥 富山の実家には納戸があり、ずっしりした母の婚礼家具が三つ並んでいる。そのうちの一つは、観音開きの扉を開けると桐の引き出しが並ぶ、本式のきもの箪笥…
文芸・カルチャー
2023/10/30
いきなり散財する ある日のこと、当時住んでいた吉祥寺の、駅前にあるパルコの三階あたりを例のごとく徘徊していた。その頃のわたしは小説家デビューまであと少しのところ…
文芸・カルチャー
2023/11/15
それは化繊か、天然か ずっと“素材”がわからなかった。 これでも着付け教室の師範コースに通っていたとき、絹についても勉強した。座学があり、生糸を精練するときは不純…
文芸・カルチャー
2023/12/15
きものはきものを呼ぶ たった数年で別人のように趣味が変わり、そしてポリエステルきものが残った……。 貯金を切り崩して買い集め、あれだけ夢中で愛したのに、すっかり収…
文芸・カルチャー
2024/1/10
戴き物きもの きものにハマり、夢中になって買い集め、思いきって手放す――というプロセスを経て手元に残った多くは、祖母と義祖母と母から譲ってもらった、戴き物のきもの…
文芸・カルチャー
2024/2/1
紫織庵大好き 〈紫織庵〉の名前を知ったのは、きものにドハマリしてすぐに行った、展示会の会場だった。ショップ店員さんにアテンドしてもらいながらあちこちのブースを巡…
文芸・カルチャー
2024/2/15
町の呉服屋さん 紫織庵で注文した長襦袢が染め上がり、京都から反物が届いた。包みを開けると、目にも鮮やかな辛子色!白生地を染めてもらうのははじめてなので、お店で見…
文芸・カルチャー
2024/2/29
収納どうしてる? 先日、きもの仲間とお喋りしていて、収納の話になった。そのとき彼女が放ったのがこの言葉。 「人に見せられないっていうきもの収納こそ見たいんですよ…
文芸・カルチャー
2024/3/15
戦前のアンティーク きもの収納の大半が戴き物で埋まっているわたしは、迂闊にきものや帯を買って、物を増やせない身。街できもののお店を見かけても、入りたいのはやまや…
文芸・カルチャー
2024/4/10
新しい草履を買いに行かなくちゃ 一度は情熱を傾けたきものから、すっかり遠ざかってしまっていた。数え上げればきりのないその要因の一つに、草履があった。 わたしが持…
文芸・カルチャー
2024/4/25