紗倉まな『凹凸』特設サイト | ダ・ヴィンチWeb
2017/4/7
女性から圧倒的な支持を集め、2017年秋の映画化も決定している『最低。』から1年。紗倉まなによる待望の新作長編小説『凹凸(おうとつ)』の情報まとめサイトです!
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小説デビュー作『最低。』の映画化が決定した紗倉まなによる初の長編小説。 結婚13年目で待望の第一子・栞が生まれた日から、その夫婦は男女の関係を断った。やがて夫の正幸と決別することを選んだ絹子は、栞を守るため母親としての自分を頑ななまでに貫こうとする。しかし、絹子のもとを離れ24歳になった栞は、〈あの日〉の出来事に縛られ続け、恋人の智嗣と実の父親である正幸を重ね合わせている自分に気が付いてしまう。家族であり、女同士でもある、母と娘。小説デビュー作『最低。』で若い女性から圧倒的な支持を集めた著者が実体験を基につづった、母子二代にわたる性と愛の物語。
2016年2月刊の小説デビュー作『最低。』が異例の重版をかさね、瀬々敬久監督のメガホンによる実写映画化も決定(今秋公開予定)。現役AV女優としても活躍中の紗倉まなが、第2作『凹凸(おうとつ)』を発表した。「小説家・紗倉まな」の才能を証明する傑作、勝負作だ。
ひとりの女の子を描くため 彼女の家族のことも描く
コラムやエッセイ、ブログの文章で高い評価を受けていた紗倉まなが、編集者のすすめで筆を執った小説デビュー作は、4人のAV女優にまつわる連作短編集だった。『最低。』というタイトルは、原稿を完成させた後で命名した。
「4人の女の子たちが、心の中で呟いている言葉はこれかな、と思ったんです」
だが、第2作のタイトルを『凹凸(おうとつ)』にすることは、今回原稿を書き出す前から決めていた。
「自分が一番書きたいこととリンクするかもしれないと思って、寝かせておいたというか、いつか何かの形で自分の中から出したいと思っていた言葉でした。『最低。』を書き終わった時に、“よっしゃ、行くぞ!”って。“次は『凹凸』じゃー!!”って(笑)。この言葉があったからこそ書き始めることができたし、この言葉にすがりながら書いていったんです」
全5章の長編小説だ。第1章では母・絹子の視点から、一人娘の栞との関係が語られる。第2章では栞の視点に切り変わり、吉祥寺でひとり暮らしをするフリーター生活が描かれる。その「24歳の栞」が、本作で最初に生み落とした人物像だ。
「『最低。』では自分と繋がっているところもあるけれど、自分ではない女の子たちを書きました。今回は、自分の心を一番書き写せるような女の子を書きたいなと思ったんです。もしも自分が今の仕事をしていなかったら、24歳のもう一人の自分はきっとこういう考えで、こういう生活を繰り返しているんじゃないかなってイメージがぱっと思い浮かびました」
栞は「おとなになることと母親になること」の大事さを感知しているが、そのことと真剣に向き合う前にお酒を飲んで忘れる。将来の夢はないし希望も特になくて……。「寂しい」という一語を使わずに、彼女の寂しさやままならなさを読者に感じさせる、確かな文章力だ。
「書かないことによって、読者の方に栞の心の中を想像してもらえる。そう信じて、できるだけ削って削って書くようにしました」
「24歳の栞」を書いていくうちに、物語が大きく膨らんでいったそう。
「ひとりの女の子を書くためには、その子の家族のことも書かなければ成り立たないなって感じたんです。家系図をたどってくような感じで、お母さんの話、お母さんの両親の話……とどんどん広がっていって、一章ごとに主人公を変えて視点を変える、今の構成に書き直しました。主人公は栞のつもりだったんですけど、気づいたらみんなが主人公になっていたんです」
相手の過剰さを受け入れる その感覚を探りたかった
栞には、半同棲中の恋人がいる。ひと回り以上年が離れた智嗣だ。2人のセックスシーンは、エロスの中に穏やかさがある。「日常の延長みたいなセックスが書きたかったんです」。相手の存在を通して自分の輪郭を確かめる、それが2人の「日常」なのだ。
「栞が持っている不安定で過剰な部分って、私自身もありありと感じているもので。そういう部分を相手に受け入れてもらって、甘えて、それで成り立っちゃっている関係が私自身は今まですごく多かった。その反対側の立場に立ったことってないな、相手の過剰さを受け入れるってどういう感覚なんだろうなって想像してみたら、分からなかったんですね。分からないからこそ、その視点から小説を書くことで探ってみたかったんです」
夫と妻、父と娘、彼氏と彼女————。物語は過去と現在を行き来しながら、「男女の凹と凸の関係」という大きな謎に迫っていく。キーとなるのは、栞が14歳の頃に離婚して家を出て行った、父の正幸だ。「みんなを主人公」にするためには、この男のことも書かなければいけなかった。
「父親の存在って、家族の中でスポットライトを浴びにくい気がするんです。抱えている闇は、もしかしたら家族の中で一番大きいのかもしれない。そこも探ってみたい、絶対に書きたい、と思いました」
父の存在が白日の下にさらされる瞬間、驚愕のサプライズが発動する。たくらみに満ちた物語だ。そして、誰もの心に忍び込んで揺さぶる、切実さに満ちた物語だ。
「私は今までひとりぼっちだなと感じた時に、すがるような思いで本を読んで“自分はひとりじゃないんだ”って何度も救われてきました。この小説を書きながら、その時の気持ちを思い出していたんです。私が書くもので、誰かがちょっとでも救われたらいいな、って。“これが遺作になってもいい!”ぐらいの強い気持ちで書きました。届いたらいいな、って思います。伝わるといいな、って」
取材・文=吉田大助
写真=飯岡拓也
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