黒木渚さんが選んだ1冊は?「この読みづらさは彼の生きづらさ。“少し誇張された私”を主人公に感じた」
毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、黒木渚さん。 (取材・文=河村道子写真=干川 修) 中・高時代は厳格な全寮制の学校で図書館の蔵書とひたすら向き合い、大学ではポスト・モダン文学を専攻。自身の音楽家としてのルーツは“音楽ではなく文学”という黒木さんにいたっても、近所の犬を殺した犯人を15歳の少年が探しゆく一冊は、「はじめ、読みづらかった」という。 「最初の数ページで、主人公は偏りのあるタイプの子だな、とわかったのですが、いったんその情報から離れて読むと感情移入がしづらくて。そこで気付いたのは、今、私が感じていることは、そのまま彼の生きづらさなんじゃないか、ということでした。普通の人たちの言葉の裏にある気持ちが読めないという彼の感覚を追体験できることが、この本の面白さのひとつだと思いました」 「私も世の中と折り合いのつかないところがあるので、“少し誇張された私”みたいな感じもした」と黒木さんが言う、人とうまく付き合えない少年は、得意な物理や数学、類まれな記憶…