親の借金を肩代わりしたけど“毒親”じゃない。「愛してるよ、と言えない不器用な人たちだったけど、心のどこかに愛があった」猫沢エミが語る、最強ネガティブ家族が残してくれたもの
撮影:関めぐみ 故郷・福島の両親を看取り、2022年2月から再びパリに渡った、ミュージシャンであり文筆家の猫沢エミさん。移住には「長い猫沢家の歴史の清算」という意味が少なからずあったとか。 最新エッセイ『猫沢家の一族』(集英社)には、猫沢さんが家族と過ごした幼少期から青春時代にかけての追憶が、現在暮らすパリの日常と共にユーモラスに綴られている。 “ヅラ”で裸族かつ虚栄心の塊のような父、いとも簡単に嘘をつく母、誇大妄想が激しくエキセントリックな言動を繰り返す祖父——今は亡き、奇想天外だけれど、どこか愛嬌のある猫沢家の先代たち。一見すれば苦難の連続とも言える思い出を、彼女は明るく笑い飛ばす。 家族のこと、フランスのこと、そして「自分の人生を生きる」ことについて、猫沢さんに聞きました。 「風呂(バス)ガス爆発」や「腐ったみかん風呂」がスタンダードだった猫沢家の不思議 ——先代のエピソードはどれも規格外で、こんな家族が本当にいるのか…と驚かされました。おじいちゃんが腐ったみかんがもったいないからと、お風呂に入れた話とか。 猫沢エミ(以下、猫沢):カビの匂いがすごいし、お湯が…